急性心膜炎はウイルス感染など様々な原因により生じ,原因不明の特発性も多い。多くの症例で胸痛を訴え,心膜液貯留を伴う。狭心症など胸痛や心電図異常を示す他の疾患との鑑別が必要となる。
疼痛・発熱に対するNSAIDsの投与など,対症療法のみで自然治癒することが多い一方,再発も稀ではない。急性期には心タンポナーデの合併,慢性期には再発や収縮性心膜炎が特に注意すべき病態である。
症状は炎症による発熱,胸痛や胸部圧迫感などであり,胸部症状は体位変換,深呼吸,咳嗽などにより悪化する。特徴的な心膜摩擦音をしばしば聴取する。
急性ウイルス性心膜炎の場合,問診で先行する上気道感染を確認できることがある。がん性心膜炎,結核性心膜炎,膠原病による急性心膜炎などの鑑別にも,基礎疾患の有無,治療歴,既往歴などの問診が重要な意味を持つ。ウイルス性心膜炎を疑えば,ペア血清によるウイルス抗体価測定を行うが,原因ウイルスが特定されることは少ない。主な原因ウイルスとして,コクサッキーウイルス,アデノウイルス,パルボウイルスなどが知られる。
血液検査:白血球増多や血清CRP値の上昇など,炎症反応を認める。傷害が心筋まで及び,CK-MBや心筋トロポニンなどが上昇すると急性心筋炎と診断される。逆に,急性心筋炎の多くで心膜炎を合併する。
12誘導心電図:冠動脈の支配領域に一致せず,対側性変化を伴わない広範な誘導でのST上昇を示すことが多い。
胸部単純X線:特異的異常所見はないが,心膜液貯留による心陰影拡大や,同じ漿膜である胸膜炎の合併による少量の胸水貯留を認めることもある。
その他の画像所見:心エコーにより多くの症例で心膜液貯留を認める。造影CTで心膜のCT値上昇,心臓MRIでT2強調画像での高信号やガドリニウム造影による遅延造影など,炎症を反映した異常所見が得られる。
心膜液の検査:心膜液貯留例では,心タンポナーデに至らずとも心膜液の性状評価,細胞診,生化学検査などの目的で心囊ドレナージが行われる。
SARS-CoV-2に対するワクチン接種後の急性心膜炎や急性心筋炎が,相当数報告されている。多くは軽症で,母集団を考えると頻度は低いものの,若年男性では他よりも頻度が高いとされ,長期的な経過など不明な点も多い。
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