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臨床研究の法制度の検討を要請-厚労省検討委員会が最終報告書 [バルサルタン論文不正問題]

No.4693 (2014年04月05日発行) P.11

登録日: 2014-04-05

最終更新日: 2016-11-15

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【概要】バルサルタン論文不正問題で厚労省の検討委員会は3月27日、臨床研究の法整備や医薬品の広告規制について検討することを求める最終報告書をまとめた。


検討委員会は昨年8月に設置されて以降、5回にわたり開催。その間、バルサルタンの臨床研究を実施した慈恵医大、京都府立医大、千葉大、名大、滋賀医大の5大学やバルサルタンを販売するノバルティスファーマ社の社員など関係者から意見聴取した。昨年10月の中間報告書では、不正論文を用いた広告が誇大広告を禁止する薬事法に違反する疑いを指摘。これを受けて厚労省は1月、ノバ社を薬事法違反の疑いで東京地方検察庁に告発状を提出した。
なお、5大学の内部調査では、京都府立医大、慈恵医大、滋賀医大はデータ操作の可能性を指摘する一方、名大はデータ操作を否定。千葉大も現在までの調査で操作はないとしている。

●大学とノバ社の双方に責任がある
最終報告書では調査によって明らかになったこととして、(1)京都府立医大と慈恵医大の研究者は臨床研究の目的を「関係者間の結束強化」とし、医学的研究課題の解明が目的ではなかった、(2)ノバ社からの長期にわたる多額の資金提供と労務提供は会社の業務として行われていた、(3)大学研究者の利益相反管理が杜撰で、臨床研究の実施体制の脆弱さが事案発生の原因と考えられる─などと列挙した。
その上で、「データ操作の責任と、わが国の医学界に対する信頼性が低下した責任は、関係大学とノバ社の双方で負うべき」と指摘。ただ、データ操作を誰が何の目的で行ったのかは、「検討委員会に調査権限がない」(森嶌昭夫委員長)ため、明らかにできなかったとした。
今後の対策としては、日本の臨床研究に対する信頼回復のために、臨床研究の質の担保、被験者保護、利益相反管理などの観点から、臨床研究を法律で規制する必要性を検討し、今年秋までに結論を出すことを国に要請。さらに、不正論文に基づく広告には誇大広告の疑いがあるため、「医薬品の広告の適正化方策を検討すべき」とした。
これを受けて厚労省は、臨床研究に関する法整備の是非を議論する検討会を早急に立ち上げる方針。医薬品の広告規制については、「まず研究班を立ち上げて、臨床研究を利用したプロモーションがどこまで許されるのかなど、論点を整理したい」(医薬食品局監視指導・麻薬対策課)とする。

●自社医薬品の研究支援に奨学寄附金は禁止
同日の検討委員会では、製薬企業72社が加盟する日本製薬工業協会の田中徳雄常務理事が不正問題を受けた今後の対応を説明した。「奨学寄附金は自社医薬品の臨床研究に対する資金提供の支援方法として用いない」「研究の中立性に疑念を抱かせるような労務提供は行わない」などとしている。

【記者の目】最終報告書は現在の臨床研究の構造的問題も浮き彫りにする。事実解明は東京地検の捜査に委ねられるが、現時点で明らかになった問題を踏まえ、大学など研究実施機関が主体的に再発防止策を検討することは可能だろう。その活発な議論を期待したい。(N)

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