脊椎関節炎は付着部を炎症の主座とするリウマチ性疾患であり,末梢関節炎,体軸関節炎,付着部炎,指趾炎等の関節症状,ぶどう膜炎,炎症性腸疾患等の関節外症状など,臨床的な共通点を示す疾患群である。病変が体軸関節(仙腸関節,脊椎)優位の強直性脊椎炎,末梢関節優位の乾癬性関節炎が代表疾患であり,骨びらんと骨新生の両者がみられるのも特徴である。
強直性脊椎炎は若年に腰背部痛で発症するが,急性ではないこと,安静や夜間に増強し動かすことで軽快すること,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の有効性が高いことなどの特徴があり,炎症性腰背部痛と呼ばれる。最も早期に仙腸関節に病変がみられ,X線で変化がなくてもMRI検査で骨炎などがみられるため,重要な検査となっている。股関節などの大関節病変も多い。
乾癬性関節炎は約8割で皮膚乾癬が先行するが,頭皮や臀部などに存在し,見落とされている場合もあるため,注意深く診察する。乾癬の家族歴も重要である。また,爪の陥凹や爪甲剝離症などの病変がしばしばみられる。いずれの疾患も分類基準はあるが,診断には用いず参考とする。除外・鑑別診断を十分に行う。
強直性脊椎炎ではNSAIDsが第一選択薬である。関節症状や炎症反応を評価し,NSAIDsで効果不十分な場合にはTNF阻害薬あるいはIL-17阻害薬を投与する。特に若年男性,炎症反応高値,HLA-B27(保険適用外)保有の場合には積極的に治療強化を行う。反復性ぶどう膜炎や炎症性腸病変がある場合にはTNF阻害薬を選択し,二次無効となった場合は他のTNF阻害薬もしくはIL-17阻害薬に切り替える。一次無効の場合はIL-17阻害薬あるいはJAK阻害薬ウパダシチニブを用いる。全身性のステロイド投与,メトトレキサートは通常使用しない。
乾癬性関節炎で末梢の多関節炎が主体の場合は,メトトレキサートを投与し,効果不十分であれば,IL-17阻害薬,IL-23阻害薬,TNF阻害薬のいずれかを用いる。ステロイドの経口投与は行わない。
関節炎に対する生物学的製剤の有効性はほぼ同等とされるが,皮膚症状に対してはIL-17阻害薬,IL-23阻害薬がTNF阻害薬に優るため,皮膚症状が臨床上問題となる場合にはそれらのいずれかを用いる。体軸病変や付着部炎が主体である場合は,NSAIDsで効果がなければTNF阻害薬を優先し,皮膚症状が問題ならIL-17阻害薬,IL-23阻害薬を考慮する。IL-23阻害薬は強直性脊椎炎には無効であるが,乾癬性関節炎の体軸病変には有効とされる。ウパダシチニブはTNF阻害薬と少なくとも同等の有効性を示し,生物学的製剤の効果不十分例にも有用である。脊椎関節炎では通常,生物学的製剤とメトトレキサートの併用は行わないが,乾癬性関節炎にTNF阻害薬を投与する場合は,メトトレキサートに追加併用することがある。
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