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薬剤性肺障害[私の治療]

No.5166 (2023年04月29日発行) P.50

堀益 靖 (広島大学病院呼吸器内科)

服部 登 (広島大学病院呼吸器内科教授)

登録日: 2023-04-30

最終更新日: 2023-04-25

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  • 薬剤性肺障害は「薬剤を投与中に起きた呼吸器系の障害の中で,薬剤と関連するもの」と定義され,間質性肺炎や肺水腫,肺胞出血等の肺胞・間質病変から気管支喘息などの気道病変,血管炎,胸膜炎など非常に多彩な病型が知られている。わが国における薬剤性肺障害症例の内訳では,5割以上を抗悪性腫瘍薬(細胞傷害性抗癌剤,分子標的治療薬,免疫チェックポイント阻害薬を含む)が占めているが,抗微生物薬,抗不整脈薬,漢方薬などのあらゆる医薬品をはじめ,健康食品やサプリメントによって発症した例も知られている。

    ▶診断のポイント

    原因となる薬剤の摂取歴があり,同薬剤による類似の肺障害の既報があり,他疾患が否定された場合に本症を疑う。薬剤の中止による病状の改善や再投与による増悪があれば診断がより確定的となるが,被疑薬の意図的な再投与は倫理的観点から推奨されない。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    薬剤性肺障害の治療の基本は原因薬剤の中止である。そのためには詳細な問診を通して原因薬剤を推定することが重要となり,特に肺障害の発症以前に新たに開始されたり用量変更されたりした薬剤がないかを注意深く精査する。その上で被疑薬を中止するが,それが困難な場合は,同系統の他薬剤への変更を検討する。呼吸不全のない軽症の薬剤性肺障害では,原因薬剤の中止のみで改善する場合もある。

    呼吸不全を伴う中等症もしくは重症の薬剤性肺障害や,軽症例であっても原因薬剤中止後に肺障害が増悪する場合には,副腎皮質ステロイドを投与する。ステロイドの用量や治療期間に明確なエビデンスはないが,プレドニゾロン換算で0.5~1.0mg/kg/日程度を初期量とし,漸減・中止する方法が一般的である。

    また,高分解能CTで両側肺野にびまん性のすりガラス影を呈し重症呼吸不全を伴う「びまん性肺胞傷害(DAD)」などの重症例では,治療開始時にステロイドパルス療法を併用する。

    なお,ステロイドの使用を考慮する状況では,感染症をはじめとした他疾患の鑑別も非常に重要であり,気管支鏡を用いた肺生検や気管支肺胞洗浄の実施も考慮すべきであることから,専門医への相談が望ましい。

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