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肛門挙筋症候群[私の治療]

No.5174 (2023年06月24日発行) P.46

髙野正太 (大腸肛門病センター高野病院院長)

登録日: 2023-06-25

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  • 検査や病理学的過程において鑑別することのできない,直腸または肛門の痛みは機能性直腸肛門痛とされる。肛門挙筋症候群は,Rome Ⅳ分類で機能性直腸肛門痛のひとつに挙げられ,30分以上持続する疼痛で肛門挙筋の牽引痛を伴う場合に診断される。精神的疾患が関与し,ストレスや不安などの心理的要因がより大きく関与していると考えられている。また,これら直腸肛門痛が仙骨神経,陰部神経など骨盤内の神経障害に起因しているとの説もあり,現在でも原因ははっきりしていない。

    ▶診断のポイント

    まず,器質的疾患を除外するために直腸肛門指診,肛門鏡診(当院ではストランゲ式肛門鏡を用いる),経肛門超音波検査,S状結腸内視鏡などを行う。また,稀に骨盤内腫瘍や仙骨腫瘍などの悪性疾患を認めることもあり,疼痛が長引く場合や難治性の場合には骨盤内MRIを行うこともある。

    神経因性の可能性などを考慮し,肛門電気感覚検査や直腸感覚検査を行う。直腸肛門指診では,肛門挙筋を牽引し疼痛が出現,増悪するかをチェックする。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    まずは保存療法を行う。頻回の通院や入院が可能な場合は,後述する低周波電気刺激療法を行いながら薬物療法を併用する。通院が困難な場合は,バイオフィードバック療法と薬物療法を併用する。当院では神経因性疼痛のひとつと考え,プレガバリンなども用いる。

    保存的治療で効果がない場合は,患者に脊髄刺激療法を提示し異物の植込みを受け入れる患者にのみ施行する。ブロック注射は基本的に効果が一過性であるため繰り返し施行する必要があり,積極的には行っていない。しかし,慢性疼痛の悪循環を断ち切ることでブロックが不要になることが期待できるため,患者の希望がある場合に行う。肛門挙筋切開は,便失禁などの合併症をきたす可能性があり,積極的には行っていない。

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