肥満例に対する減量手術は非手術減量治療に比べ、術後24年間(中央値)にわたり死亡率を有意に低下させる(22.8 vs. 26.4%)。これは大規模ランダム化比較試験"SoS"の延長観察から明らかになった[Carlsson LMS, et al. 2020]。
6月23日から米国サンディエゴで開催された米国糖尿病学会(ADA)第83回学術集会では、減量手術によるこの死亡抑制作用を術前2型糖尿病(DM)合併の「ある/なし」で検討した結果が報告された。2型DM合併の有無を問わず死亡率は低値となったものの、多くが「寛解」したはずの術前2型DM例では期待されたほどのリスク低下は認められなかったようだ。報告者はスウェーデン・イェーテボリ大学のJohanna Andersson Assarsson氏。
同試験の対象は、37~60歳のBMIが男性「≧34」kg/m2、女性「≧38」kg/m2で、減量手術の適応があった4047例である。減量手術群では担当医判断の術式が施行され、対照群における非手術減量治療も担当医の判断で実施された(経過観察のみも可)。
今回はそのうちの4032例が解析対象となった。減量手術群の16.5%、対照群の15.0%が2型DMを合併していた。
これらを約20年間追跡した結果、まずBMIだが、減量手術群では2型DM合併の有無を問わず、術前に比べ7.0kg/m2強の低値が維持された。推移を見ると減量手術直後の著減からは3.0kg/m2前後のリバウンドこそあったが、その後は増加することなく術前に比べ約7.0kg/m2の低値のまま推移した。
一方対照群のBMIは観察期間を通じほぼ不変だった(2型DM例で若干の低下傾向。非DM例ではその逆)。
次に今回の1次評価項目である「死亡」のリスクを見ると、「減量手術」群における対「対照」群補正後ハザード比(HR)は、2型DM合併群で0.77(95%信頼区間[CI]:0.61-0.97)、非合併群でも0.82(0.72-0.94)といずれも有意低値だった。
なお「減量手術」によって延長された生存期間は、2型DM合併群で2.1年、非合併群は1.6年だった。
ただし死亡率そのものは減量手術の有無を問わず、2型DM合併例で非合併例に比べ約2倍の有意高値だった。すなわちまず対照群で比べると、2型DM「非合併」例の死亡率が「約13/1000人年」だったのに対し「合併」例では「27/1000人年」だった。減量手術群でも同様で、2型DM「非合併」例の「11弱/1000人年」に対し「合併」例では「21/1000人年」である(数字はグラフより読み取り)。
心臓血管系死亡も同様で、DM合併の有無を問わず減量手術群では有意なリスク減少を認めたものの、2型DM合併群では非合併群に比べ、減量手術の有無を問わず発生率は2.5倍弱の高値だった(検定示されず)。
減量手術群ではすでに、術後2年間の2型DM寛解率が72.3%、15年後でも30.4%と報告されていたため[Sjöström L, et al. 2014]、2型DMがもたらす悪影響の減弱が期待されていた。そのため今回の減量手術群における術前2型DM例の高死亡リスクには、フロアから驚きの声が上がっていた。
なお「がん死」リスクは2型DM合併の有無を問わず、減量手術群と対照群間に有意差はない。
報告者に開示すべき利益相反はないとのことである。
また本研究はInt J Obesity誌にて出版準備中とのことだ。