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特集:糖尿病治療薬マニア―ガイドライン・教科書ではわかりにくい〈現場的使用法〉

No.5191 (2023年10月21日発行) P.18

篠田純治 (トヨタ記念病院内分泌・糖尿病内科 科部長)

登録日: 2023-10-20

最終更新日: 2023-10-20

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名古屋大学医学部卒業。1996年からトヨタ記念病院。糖尿病・内分泌の診療・学術活動・若手教育に励む。栄養学(NST)も専門とし,日本臨床栄養代謝学会(JSPEN)の指導医・代議員・NST委員会委員でもある。

1 糖尿病治療薬の分類
・病態に対応した分類
・β細胞への作用による分類

2 糖尿病治療薬の実際の使用法
(1)ビグアナイド薬
・多彩な作用機序で,用量依存的に血糖降下作用が増強する。
・消化器症状は起こりうるため,低用量から開始し,状態をみながら漸増する。
・乳酸アシドーシスは,単独では稀であるが,過度のアルコール摂取者と腎機能障害患者,低酸素状態には注意する。
(2)チアゾリジン薬
・水分貯留しやすく,心不全・腎不全では使いにくい。
・食事療法が実行できないと体重が増加することも多い。
(3)α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)
・3種類の薬剤があるが,実際の使用感にはかなり差異がある。
・ミグリトールは,アカルボースやボグリボースと異なり,早期に下痢・軟便傾向となるが,慣れて減少することも多い。
(4)SGLT2阻害薬
・インスリン非依存性の作用機序をもつ。
・糖尿病がなくても,慢性腎臓病・心不全に対しても広く使用される。
・寝たきりに近いような,活動性の低い高齢者には使用しない。
(5)イメグリミン
・血糖依存性インスリン分泌促進と糖新生抑制・糖取り込み能改善作用があり,ミトコンドリアを介した作用機序が想定されている。
・メトホルミンとの併用でも血糖低下効果はあるが,消化器症状は少し増える可能性がある。
(6)DPP-4阻害薬
・広く使用されており,低血糖が起こりにくく,体重の変化なし。
・SU薬との併用では過度な血糖降下に注意する。
(7)GLP-1受容体作動薬
・短時間作用と長時間作用の薬剤で効き方が異なる。
・心血管疾患・腎に対する保護効果のエビデンスをもつ薬剤もある。
・デュラグルチドは,他のGLP-1受容体作動薬とは趣が異なる。
・経口セマグルチドは,一般的な内服薬とは異なる内服方法が必要。
(8)スルホニル尿素(SU)薬
・現在では,使用頻度が著しく下がっている。
・できるだけ使用しない,使用するにしてもできるだけ少量とする。
(9)速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)
・3種類の薬剤があるが,実際には少しずつ異なる。
(10)インスリン製剤
・同じ超速効型や持効型でも,製剤により構造や効果時間調整のコンセプトが異なる。

3 薬剤選択の方法
(1)ガイドラインから
・米国糖尿病学会(ADA):Standards of Care in Diabetes—2023
・日本糖尿病学会:2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム
(2)実際の薬剤選択:頭の中で考えること(私見)
・経緯をよく確認し,体重や生活環境を聴取しながら,内因性インスリンの分泌パターンがどのようになっているかを想像して,それに対応する薬剤を考える。
・がんや1型糖尿病など,他の悪化要因は必ず念頭に置く。
・効果予測をし,長期的なコントロールや合併症,さらに長期的な人生まで考慮する。

伝えたいこと…
糖尿病治療薬の選択肢は近年増えており,多数の手段が使えるようになっている。各薬剤の特徴を臨床現場的に理解し,それぞれの患者の状態に合わせた,先も見越した薬剤選択をし,「糖尿病治療薬マニア」になっていただくことを期待する。

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