・甲状腺機能低下症とは,末梢組織における甲状腺ホルモンの作用不足による病態である。
・最も多いのは,慢性甲状腺炎(橋本病)による原発性甲状腺機能低下症である。
・一過性のものと永続性のものがあり,ヨード過剰摂取,破壊性甲状腺炎の回復期などは一過性であることが多い。
・びまん性甲状腺腫を触知する場合は,橋本病が疑われる。
・橋本病により全身の代謝が低下する。
・精神機能の低下により,眠気,記憶障害,抑うつを生じる。
・皮膚は乾燥し,脱毛や,指で押しても跡を残さない浮腫みを生じる。
・消化管運動の低下による便秘,心臓機能の低下による徐脈が生じる。
・体重増加,寒がり,疲労感がよく認められ,女性では月経異常が生じる場合がある。
・一般検査➡高コレステロールなどの脂質代謝異常を認めることが多い。
・心電図➡徐脈,低電位を呈する場合がある。
・甲状腺機能低下症が疑われる場合➡血清FT4値と血清TSH値の測定(FT4低値・TSH高値➡原発性の疑い)。
・甲状腺腫を触知し,橋本病が疑われる場合➡抗サイログロブリン抗体,抗TPO抗体の測定。
・中枢性が疑われる場合➡視床下部や下垂体の精査が必要である。
・一過性甲状腺機能低下症が疑われる場合➡症状が軽度の場合は治療の必要はない。
・ヨード過剰摂取の場合➡ヨード摂取の制限をすると甲状腺機能が回復する。
・永続性甲状腺機能低下症の場合➡LT4製剤による治療を行う。
・潜在性甲状腺機能低下症:FT4値が基準値範囲内だがTSH値が基準値上限を超える。
・甲状腺術後およびバセドウ病131I内用療法後甲状腺機能低下症:検査における隈病院での取り組み。
甲状腺機能低下症とは,末梢組織における甲状腺ホルモンの作用不足による病態である。作用不足の病因としては,甲状腺ホルモン自体の合成・分泌の低下によるものと,末梢組織の甲状腺ホルモンに対する反応性低下(甲状腺ホルモン不応症)によるものに大別される。
前者は,さらに,甲状腺そのものに病因がある原発性甲状腺機能低下症と,下垂体や視床下部に病因がある中枢性甲状腺機能低下症にわけられる。病因による分類を表1に示した。