スタチン服用に伴う2型糖尿病(DM)発症リスクの上昇はすでに、ランダム化比較試験(RCT)を対象とした複数のメタ解析で報告されている[Sattar N, et al. 2010、Khan SU, et al. 2019]。しかしそれらで示されたのは相対的なリスク増加のみで、絶対リスクがどれほど増えるかは不明だった。しかし3月27日、その点を補うメタ解析が、Lancet Diabetes & Endocrinology誌に掲載された。RCT個別データを用いたメタ解析グループであるCholesterol Treatment Trialists’(CTT)によるメタ解析である。スタチンに伴う2型DM発症の絶対リスク上昇率は「0.12~1.27%/年」だった(なおすでに、スタチンの有用性は2型DM惹起に伴うリスクを大きく上回るという推計も報告されている[Collins R, et al. 2016])。
本メタ解析の対象は、1000例以上を登録して2年間以上の予定でスタチンをプラセボと比較したすべての二重盲検RCTである。19試験が相当し、それらに参加した12万3940例の個人データが解析された。
上記データを用いて、スタチン服用に伴うDM発症リスクをプラセボと比較した。その際、相対リスク(本稿では割愛)のみならず、絶対リスクも比較した。
・服用開始時「非」2型DM例
2型DM発症リスクは、低・中等度強度スタチン服用例で有意に上昇していた。ただしプラセボと比べた絶対リスクの差は「0.12%/年」である(7万8445例解析)。高強度スタチンではこの差(有意)が広がり、「1.27%/年」となった(1万9794例解析)。なお、スタチン服用に伴う2型DM発症相対リスクは、スタチン強度の高低を問わず、経時的増強を観察しなかった。血糖値もスタチン群で、プラセボ群に比べ有意に高値となっていた。ただし上昇幅は低・中等度強度スタチン、高強度スタチンとも0.72mg/dLだった。HbA1cも同様で、上昇幅はそれぞれ0.06%と0.08%である。
・服用開始時2型DM例
「血糖値相対的10%以上増加」の発現はスタチン服用例でプラセボに比べ有意に多かった。プラセボと比べた発現率増加幅は、低・中等度強度スタチンで「1.49%/年」(2万4050例解析)、高強度スタチンなら「3.02%/年」(1651例解析)だった。
本研究は、British Heart FoundationとUK Medical Research Council、Australian National Health and Medical Research Councilから資金提供を受けた。