SGLT2阻害薬は、2型糖尿病(DM)合併の有無を問わず心腎保護作用が報告されている。しかしその作用機序は明らかではない。免疫系への作用を介する抗炎症作用を示唆するレビューが近時報告されたものの [Bendotti G, et al. 2023] 、ランダム化比較試験(RCT)メタ解析からは、炎症への作用は副次的でありメインはアディポカイン分泌プロファイルの改善である可能性が示された。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(英国)のLeonardo Buttice氏らが4月11日、Diabetes, Obesity and Metabolism誌で報告した。
今回解析されたのは、2型DM、心不全、慢性腎臓病に対してSGLT2阻害薬を用いたRCT 38報(1万4967例)である(17報が日本から)。登録例の平均年齢は62.0歳、男性が63.3%を占めた。服用開始時のHbA1c平均値は8.1%、BMI平均値は30.9kg/m2だった。
これら38報を用いて、SGLT2阻害薬服用による血中バイオマーカーの変化を調べた。服用期間中央値は16週間である(四分位範囲:12-24週間)。
その結果、SGLT2阻害薬群では以下のマーカーが対照群に比べ有意に改善されていた。
すなわち、炎症関連ではIL-6とTNF受容体1型(TNFR1)濃度の有意低下、また代謝関連ではアディポネクチンの有意増加、レプチンの有意低下―である。
一方、炎症マーカーではCRPとTNF-α、MCP-1は対照群と有意差はなかった。PAI-1濃度も同様である。
なおSGLT2阻害薬群では、インスリン感受性(HOMA-IR)が有意に改善されていた。
Buttice氏らはこれらの結果から、SGLT2阻害薬には(直接的)抗炎症作用はないと判断し、今回観察されたIL-6とTNFR1の有意低下は、アディポカイン分泌プロファイルの改善によりもたらされたのではないかと考察する(先行研究にもかかる改善を支持するものあり [Wang D, et al. 2022])。そしてSGLT2阻害薬によるCV保護作用の一端は、このアディポカインへの好影響を介している可能性があると結論している。
本研究には開示すべき利益相反はないとのことだ。