胃を原発とする悪性腫瘍。その多くは上皮性の腺癌であるが,カルチノイドや内分泌細胞癌などの特殊型や,悪性リンパ腫などの非上皮性腫瘍を一定頻度で認める。胃腺癌の治療には内視鏡治療,手術,化学療法が,進行度や患者状態に応じて組み合わせて用いられる。
早期がんの多くは無症状である。がんが進行するにつれて,潰瘍形成に伴う心窩部痛や消化管出血をきたす。また,胃の蠕動不良や流出路障害に伴う嘔気・嘔吐を生じることがある。周囲臓器への浸潤や遠隔転移をきたしている場合には,腹部・背部痛のほか,転移臓器に応じた症状が出現する。
疾患の拾い上げには上部消化管造影などの各種検査が用いられるが,診断には上部消化管内視鏡検査と生検に伴う病理組織学的検査が必要である。治療方針決定には進行度の評価が必須となる。リンパ節や遠隔転移の有無を評価するために,胸腹部骨盤CT検査が行われる。進行胃癌に対しては,positron emission tomography(PET)検査を併施することもある。
先述の通り,胃癌治療は疾患の進行度と患者状態に応じて選択する。内視鏡治療適応の早期胃癌に対しては,内視鏡治療を選択する。その段階を越えて進行し,かつ遠隔転移を有さない場合は,胃切除術が選択されることが多い。遠隔転移を有する場合は,全身化学療法が選択される。他臓器浸潤を有する局所進行胃癌の場合,合併切除が可能な臓器であれば,胃切除術が選択される。しかし,合併切除が困難な臓器,または局所制御が生存期間延長に寄与しないと考えられるような高度進行胃癌に対しては,全身化学療法が用いられる。昨今,薬物療法の奏効率向上に伴い,切除不能病期から再度根治をめざすコンバージョン手術が選択肢となりつつある。
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