減量に向けた遠隔生活習慣指導に1年間最大8万円の経済的インセンティブを加えると、遠隔指導のみでは達成できない減量が得られることが、ランダム化比較試験(RCT)"Game of Stones" の結果、明らかになった。Pat Hoddinott氏らが5月14日、Journal of American Medical Association誌で報告した。
本RCTの対象は、「BMI≧30 kg/m2」の英国男性585例である。減量治療や減量手術を直近に実施した例などは除外されている。平均年齢は50.7歳、白人が90%を占めた。平均体重は118.5kg、BMI平均値は37.7 kg/m2だった。また71%が肥満関連健康障害を訴え、18%が糖尿病を合併していた。
これら585例は次の3群にランダム化され、1年間観察された。すなわち、(1)テキストメッセージ減量指導群、(2)テキストメッセージ+経済的インセンティブ付加群、(3)いずれも行わない対照群―である。
「テキストメッセージ」の内容は生活指導がほとんどで(最多で364回)、それに加え「受診アポのリマインド」(3回)、「体重目標達成通知」(3回)が携帯電話宛に送信された(受信回数は患者が調整可)。
「経済的インセンティブ」ではまず400ポンド(約8万円)がアカウントに登録され、減量目標未達成の場合は没収される旨をテキストメッセージで届けた。具体的には3カ月で5%減量できなければ1万円が失われ、6カ月後の減量幅が10%に満たなければ3万円が消える。そして10%減量に成功してもその後6カ月間維持できなければ4万円がアカウントから取り除かれる(体重は盲検下家庭医施設で測定)。
その結果、1年後の体重減少率(1次評価項目)は、「対照」群が「1.3%」だったのに対し、「経済的インセンティブ付加」群では「4.8%」の有意高値だった。一方、「テキストメッセージ」群は2.7%で、「対照」群と有意差を認めなかった。
体重そのもので比較しても同様で、「経済的インセンティブ付加」群では「対照」群よりも、減量幅は有意に大きかった(5.7 kg vs. 1.5 kg)。一方「テキストメッセージ」群の減量幅は、「対照」群と有意差を認めなかった(3.0 kg vs. 1.5 kg)。治療効率を調べると、「経済的インセンティブ付加」による体重「5%以上」減少の必要治療者数(NNT)は「4」、「10%以上」でも「5」だった。
Hoddinott氏らは本試験参加者の39%が社会経済的に恵まれていない背景を有していた点を指摘し、それが経済的インセンティブの効果を強めた可能性を指摘している。一方、本試験では被験者と医療従事者の接触回数がガイドライン推奨よりも少なく済んだ点を挙げ、インセンティブを用意しても費用対効果はさほど悪化しないと考えているようである。
本研究は英国政府機関から資金提供を受けた。