慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)は,長期間の有害物質吸入曝露によって気道と肺胞が障害されることで発症し,咳嗽,喀痰,労作時呼吸困難を呈する。患者は気道感染を併発することで,症状が悪化する場合がある(COPD増悪)。
重喫煙歴を有する中高年に,呼吸機能検査で閉塞性換気障害(1秒率70%未満)を確認する。胸部CTで肺気腫を指摘され,診断のきっかけとなることもある。
禁煙は必須であり,必要に応じて禁煙指導を行う。増悪は転帰を悪化させる。増悪の抑制のため,ワクチン療法(インフルエンザワクチン,肺炎球菌ワクチン,新型コロナウイルスワクチンなどの定期的な接種)を施行する。吸入気管支拡張薬である長時間作用性抗コリン薬(LAMA)と長時間作用性β刺激薬(LABA)が薬物療法の中心となる。LAMAのほうがLABAよりも効果でまさるが,LAMAは閉塞隅角緑内障や高度の排尿障害を伴う前立腺肥大症に対しては禁忌である。
方針を決めるに際して,過去のCOPD増悪歴と症状の強さ,喘息合併の有無,末梢血好酸球数を評価する。抗菌薬やステロイドを内服しなければならない増悪(中等度増悪)を年2回以上経験している,もしくは増悪で年1回以上入院(重度増悪)しているような患者は高増悪リスク患者となる。症状を評価するツールとして,COPD質問票(CAT)と修正MRC(mMRC)スケールを用いる。CATが10点以上もしくはmMRC 2(平地歩行で息切れを生じる)以上の症状があるようならば,重症状患者であると判定する。高増悪リスク患者に対して,吸入ステロイド(ICS)は増悪頻度を低下させることが期待できる。特に,末梢血好酸球濃度が300/μL以上の場合には増悪抑制効果が高い。一方,末梢血好酸球濃度が100/μL未満の場合には無効と予測される。
残り1,356文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する