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急性胃粘膜病変(AGML)(急性胃炎)[私の治療]

No.5227 (2024年06月29日発行) P.36

塩谷昭子 (川崎医科大学消化器内科主任教授)

登録日: 2024-06-26

最終更新日: 2024-06-25

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  • 急性胃粘膜病変(acute gastric mucosal lesion:AGML)は,急激な上腹部症状(上腹部不快感,悪心・嘔吐など)とともに,内視鏡検査で多発性のびらんや潰瘍などの胃粘膜所見を認める疾患である。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を含めた薬剤やストレスなど,種々の病因により惹起された胃の急性炎症性疾患である。

    ▶診断のポイント

    詳細な問診により病因を確認する。臨床症状と胃粘膜に多発するびらんや黒色の凝血塊を伴う浅い潰瘍の内視鏡所見から診断は容易である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    原因・誘因の除去と薬物療法による保存的治療である。NSAIDsなどの原因薬剤の内服があれば中止を検討する。心理的,社会的ストレスが原因となっている場合には,生活習慣の是正や安静が必要である。基礎疾患の管理が必要な場合や腹部症状が強い場合は,入院の上で絶食として,輸液による全身管理を行う。出血例では,緊急内視鏡検査を行い,必要に応じて内視鏡的止血術や輸血を行う。通常,薬物療法が奏効し速やかに改善することが多く,予後は比較的良好である。

    薬物療法としては,基本的には消化性潰瘍の治療に準じる。酸分泌抑制薬〔H2受容体拮抗薬(H2ブロッカー),プロトンポンプ阻害薬(PPI),カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(potassium-competitive acid blocker:P-CAB)のタケキャブ(ボノプラザンフマル酸塩)〕や胃粘膜防御因子増強薬が使用される。NSAIDsが原因のときは,プロスタグランジン製剤〔サイトテック(ミソプロストール)〕を用いることがある。悪心・嘔吐には制吐薬〔プリンペラン(メトクロプラミド)〕を使用し,腹痛には適宜,鎮痙薬〔ブスコパン(ブチルスコポラミン臭化物)〕や酸分泌抑制薬の静脈注射が効果的であるが,痛みが強い場合には,鎮痛薬〔ソセゴン(ペンタゾシン)〕注射液を使用する。また,Helicobacter pylori感染が原因と考えられる場合は,除菌を行うことがある。アニサキスの急性感染に起因する場合は,虫体を生検鉗子で摘出することにより改善する。

    治療後に,NSAIDsまたは低用量アスピリン(LDA)の長期投与が必要な場合は,潰瘍の予防にはP-CAB,PPIの内服が推奨され,NSAIDsは可能であればCOX-2選択的阻害薬〔セレコックス(セレコキシブ)〕への変更が好ましい1)。PPI,P-CABによる潰瘍再発予防投与は,長期に保険適用となっている。PPIの種類により薬剤の使用量が限定されているので,注意が必要である。

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