全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)は,15〜40歳代の女性(男女比1:9)に好発する代表的な全身性自己免疫疾患であり,発熱,易疲労感といった全身症状に加え,複数の臓器に軽度〜重度の病変をきたす。わが国の患者数は6万〜10万人と推計される。
SLEの分類基準(2019年米国/欧州リウマチ学会)を参考にして,臨床症状と検査所見から総合的に診断する。臨床症状には,発熱,関節痛などの全身症状に加えて,蝶形紅斑(特徴的),脱毛,口内炎などの皮膚・粘膜症状,貧血・出血傾向,漿膜炎,ループス腎炎(LN)や神経精神(NP)ループスなどに伴う症状がある。検査所見では,汎血球減少,抗核抗体陽性(≧80倍),抗dsDNA抗体や抗Sm抗体などの自己抗体陽性,補体(C3,C4)低下などが特徴的である。LNでは,蛋白尿や顕微鏡的血尿を認め,腎生検による免疫複合体の沈着の確認は診断的価値が高い。
SLEの臨床症状は多彩であり,複数の臓器病変をもって発症することも多い。疾患活動性の評価には,英国ループス評価グループ(British Isles Lupus Assessment Group:BILAG)やSLE疾患活動性指数(SLE disease activity index:SLEDAI)などの総合的指標を用いる。治療方針は最重症の臓器病変や疾患活動性の程度に基づき決定する。治療目標は速やかな寛解導入であり,導入後は再燃や臓器障害の予防をめざした厳密な治療管理が大切である。
治療は,主要臓器や疾患活動性に応じて,治療薬を組み合わせて行う。ヒドロキシクロロキン(HCQ)は,禁忌がなければすべてのSLE患者への使用が推奨され,特に皮膚症状への効果は高いとされる。グルココルチコイド(GC)は,臓器病変や重症度によって投与量を決定する。経口GCの減量速度は,従来1〜2週間で10〜20%程度とされてきたが,最近では他剤併用により速まりつつある。また,最重症病態ではメチルプレドニゾロン・パルス療法を用いる。従来SLEではGC治療が中心だったが,長期使用による様々な副作用を考慮し,本治療は橋渡し(bridging)治療と認識し,他剤の併用にてGC減量(≦5mg/日)や休薬をめざす。
免疫抑制薬は,GCにて寛解導入困難例やGC減量目的にて併用される。特に,重症病態であるLNやNPループスでは本剤の併用が必要なことが多い。シクロホスファミド(CYC)は,発がん性や出血性膀胱炎リスクなどから経静脈CYCパルス療法(IVCY)での使用が多い。ミコフェノール酸モフェチル(MMF)は,特にLNの寛解導入や維持療法にて高い有用性がある。カルシニューリン阻害薬(CNI)であるタクロリムス(TAC)もLNにおける尿蛋白改善やGC減量効果がある。
生物学的製剤には,ベリムマブ(BLM,抗ヒト型BAFF抗体)やアニフロルマブ(ANI,抗ヒト型IFNAR抗体)があり,治療抵抗性SLEで既存治療に併用することで,治療反応性の向上,再燃抑制,GC減量効果がある。BLMではLNに対する免疫抑制薬との高い併用効果が示されている。
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