2型糖尿病(DM)例の新規血糖降下薬に伴う高カリウム血症リスクは、DPP-4阻害薬に比べてSGLT2阻害薬やGLP-1-RAの方が低いようだ。SGLT2阻害薬とGLP-1-RAを比べると前者がさらに低い。米国における大規模観察研究の結果として、ブリガム・アンド・ウィミンズ病院(米国)のEdouard L Fu氏らが6月26日、British Medical Journal誌で報告した。
2型DM例における高カリウム血症はレニン・アンジオテンシン系阻害薬(RASi)やミネラルコルチコイド阻害薬といった心腎保護薬の中止につながるため、転帰への悪影響が懸念される。
今回解析対象となったのは、米国でSGLT2阻害薬かGLP-1-RA、DPP-4阻害薬を開始した18歳以上の2型DM例 430万例弱である。ただしこれら3剤のいずれかを併用した例は除外されている。また末期腎不全例と高K血症/K吸着剤使用既往例も除外した。
これら430万例弱から傾向スコアを用いて背景因子をマッチさせた以下の3グループごとに、その後の「高カリウム血症」発症リスクを比較した。
比較されたのは、(1)SGLT2阻害薬群(53万1329例) vs. DPP-4阻害薬群(96万3270例)、(2)GLP-1-RA群(51万9012例)vs. DPP-4阻害薬群(99万9728例)、(3)SGLT2阻害薬群(64万7008例) vs. GLP-1-RA群(58万5422例)―である。
・患者背景
上記3群とも平均年齢は60歳強。男女はほぼ半分ずつだった。人種は白人が80%弱を占めた。推算糸球体濾過率平均は79 mL/分/1.73m2、血清カリウム濃度平均値は4.4 mmol/Lだった。また約30%が心血管系疾患を合併し、ステージ3、4慢性腎臓病も10%弱が合併していた。薬剤としては7割強がRASiを服用し、一方、ループ利尿薬使用率は13%前後だった。
平均8.1-8.6カ月の観察期間後、「高カリウム血症」の発生率とリスクは以下の通りだった。
(1)SGLT2阻害薬 vs. DPP-4阻害薬
発生率:18.5 vs. 25.3/1000人年。SGLT2阻害薬群のDPP-4阻害薬群に対するハザード比:0.75 (95%信頼区間[CI]:0.73-0.78)。両群の発生率曲線は観察開始後6カ月を待たずに乖離が始まり、観察終了時まで差は開き続けた。
(2)GLP-1-RA vs. DPP-4阻害薬
発生率:22.1 vs. 28.5%。GLP-1-RA群のDPP-4阻害薬群に対するHR:0.79(95%CI:0.77-0.82)。こちらも両群の発生率曲線は観察開始後6カ月を待たずに乖離が始まり、観察終了時まで差は開き続けた。
(3)SGLT2阻害薬 vs. GLP-1-RA
発生率:19.8 vs. 22.1%。SGLT2阻害薬群のGLP-1-RA群に対するハザード比:0.92(95%CI:0.89-0.95)。両群の発生率曲線が乖離し始めたのは1年経過後からだった。その後、差は開き続けた。
・DPP-4阻害薬群では、SGLT2阻害薬/GLP-1-RAと比べ、高カリウム血症リスクが上昇しない亜集団は確認されなかった。
Fu氏らはSGLT2阻害薬とGLP-1-RA間では高カリウム血症リスクに大きな差はないと考えているようだ。一方、GLP-1-RAではSGLT2阻害薬[Fletcher RA, et al. 2023] と異なり、ランダム化比較試験における「RASi中止減少」が報告されていない点にも言及している。
本研究はブリガム・アンド・ウィミンズ病院から研究費の提供を受けた。