好酸球性肺炎は,肺実質や間質に好酸球が浸潤する疾患である。本症は,原因が明確なものと不明なものに大別される。具体的には,薬剤誘発性やアレルギー性気管支肺真菌症などが前者に,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA)などが後者に分類される。本稿では,原因不明で肺に限局する急性好酸球性肺炎(acute eosinophilic pneumonia:AEP)と慢性好酸球性肺炎(chronic eosinophilic pneumonia:CEP)に焦点を当てる。
疫学:AEPは20~40歳の男性に多くみられる。アレルギー素因は少なく,喫煙や電子タバコの使用が誘因となることがある。
臨床症状:乾性咳嗽(95%),呼吸困難(92%),発熱(88%)が主要症状である。胸膜炎による胸痛を伴うこともある。
検査所見:末梢好酸球数は発症早期には正常範囲内であるが,発症後1週間程度で上昇する。胸部X線では両側のびまん性すりガラス影・浸潤影を認めることが多い。胸部CTでは小葉間隔壁肥厚や胸水貯留を認めることが多い。気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid:BALF)中の好酸球は25%以上に上昇している。
診断:Philitらの基準1)に従うことが一般的である。すなわち,①急性発症の発熱,②低酸素血症,③胸部X線びまん性陰影,④BALF中の好酸球25%以上あるいは肺への好酸球浸潤,⑤薬剤や寄生虫などの好酸球性肺炎を起こしうる疾患の除外,である。
疫学:CEPは30~50歳代の女性に多く,アレルギー素因が関連していることが多い。
臨床症状:数カ月にわたる咳嗽,喀痰,労作時呼吸困難がみられるが,呼吸不全は比較的軽度である。
検査所見:末梢好酸球数は1000/µL以上であることが多い。胸部X線では両側性の陰影が一般的で,CEPの約25%で末梢側優位の浸潤影(“photographic negative pattern”)を認める。胸部CTでは胸膜直下の末梢側優位の浸潤影とすりガラス影を認める。
診断:絶対的な基準はないが,以下の項目を参考に診断される2)。①2週間を超える臨床症状,②胸部X線異常,③BALF中の好酸球25%以上,末梢好酸球上昇あるいは肺への好酸球浸潤,④他の好酸球性肺疾患の除外。
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