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バレット食道[私の治療]

No.5232 (2024年08月03日発行) P.36

山本浩之 (がん研有明病院上部消化管内科副医長)

平澤俊明 (がん研有明病院上部消化管内科胃担当部長)

後藤田卓志 (がん研有明病院上部消化管内科部長)

登録日: 2024-07-31

最終更新日: 2024-07-30

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  • バレット食道は,重層扁平上皮で被覆されていた食道粘膜が,胃から連続して円柱上皮に置換された状態(columnar-lined esophagus:CLE)と定義されている1)。米国では,組織学的に胚細胞が存在するCLEのみをバレット食道と定義している。胃酸および胆汁酸などの慢性的な酸逆流が発生要因とされている。
    わが国では欧米と比較して罹患率は低いが,生活習慣の欧米化,肥満の増加,Helicobacter pylori除菌等により酸分泌過多となりやすく,胃食道逆流症(gastroesophageal reflex disease:GERD)とともに罹患率が増加傾向にあり注目されている。バレット食道が長いほどバレット食道腺癌の発症リスクがあるため,注意が必要である。

    ▶診断のポイント

    上部消化管内視鏡検査におけるバレット食道の診断には,食道胃接合部(esophagogastric junction:EGJ)の同定が必要である。わが国ではEGJは食道下部の柵状血管の下端が一般的であるが,柵状血管が判定できない場合は,胃の縦走ひだの口側終末部をEGJと判断する(日本以外ではこちらが一般的)。EGJと扁平上皮円柱上皮接合部(squamous-columnar junction:SCJ)の間をバレット食道と診断する()。内視鏡による送気と患者に深吸気を促すことでEGJは伸展され観察しやすくなる。組織学的には円柱上皮内の扁平上皮島の存在,円柱上皮下の固有食道腺とその導管,円柱上皮下の粘膜筋板の二重構造など,食道でみられる所見を指標に判定する。

    バレット食道の分類にはプラハ分類(C&M分類)が一般的であり,EGJから口側に伸展する全周性の円柱上皮部分の長さをC(circumferential extent),非全周性の円柱上皮部分の最大長をM(maximum extent)とし,その長さ(cm)を表記する。最大長のバレット粘膜が3cm未満であるものはshort segment Barrett’s esophagus(SSBE)とされ,一部でも3cm以上のバレット粘膜を認めるものはlong segment Barrett’s esophagus(LSBE)と定義されている。『食道癌取扱い規約 第11版』までは,全周性に3cm以上のバレット粘膜を認める場合がLSBEと定義されていたが,国際的な定義に合わせて第12版より変更された。たとえばC1M2のバレット食道はSSBEであるが,C2M4のバレット食道はLSBEとなる。なお,わが国におけるバレット食道の大多数はSSBEであり,LSBEは比較的稀である。

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