SUMMARY
プライマリ・ケアのニーズが増大しているのに,プライマリ・ケアを専門とする医師はなかなか増えない。今後は医学生・研修医などへの早期教育,他領域専門医への総合診療リカレント教育,多職種とのチーム形成とタスク・シフティングなどがさらに重要性を増すと考えられる。
KEYWORD
リカレント教育
一般的には,社会人として一定の経験をした後に現職を休職・離職し,大学・大学院・ビジネススクールなどの教育機関で学び直すことを指す。医師の場合,働き方の多様化や社会的責任の大きさを考慮すると,もともと持っている専門分野での仕事を一時的に制限してでも,新たな分野を習得するために一定のエフォートを割くことが望ましい。
PROFILE
都市部の診療所所長として外来・訪問・健診業務に従事。総合診療の専攻医の指導,指導医育成もライフワークとしている。
POLICY・座右の銘
Father, give us courage to change what must be altered, serenity to accept what cannot be helped, and the insight to know the one from the other.
団塊の世代(1947〜49年生まれ)が75歳以上となる2025年問題,団塊ジュニア世代(1971〜74年生まれ)が65歳以上となる2040年問題など,プライマリ・ケアの需要は加速度的に高まることが予想される。急速な変化に医療・介護・福祉の現場はどう対応していくのか,家庭医・総合診療医を養成する立場から考えてみたい。
プライマリ・ケアに必要な医師数はどのように算出するのか?巷間,住民2000人に対して1人の総合診療医が必要だとされている。単純計算では,わが国にはおよそ6万人の総合診療医が必要ということになるが,ことはそう単純ではない。フリーアクセス・自由開業制など日本独自の制度があり,内科や小児科をはじめ既にプライマリ・ケアを担う総合診療分野以外の専門医の存在がある。看護師や薬剤師をはじめ他の保健医療専門職との役割分担が他国とは異なり,国民の受療に関する意識・行動も異なる。ただ,OECDも2015年のレビューで「未成熟なプライマリ・ケア提供体制」を指摘している通り,高齢化の進展が著しいわが国でプライマリ・ケアの担い手が不足していることに疑いの余地はない。