糖尿病にはインスリン分泌がほぼ枯渇している1型糖尿病と,インスリン分泌の低下とインスリン抵抗性が病態の背景にある2型糖尿病がある。1型糖尿病はインスリン注射治療が絶対適応である。2型糖尿病の多くは食事・運動療法と経口血糖降下薬で治療を開始する。
1型糖尿病は比較的急な発症で,著しい高血糖にケトーシスを伴うことがある。
2型糖尿病は家族歴,肥満歴などを背景に30~40歳代から血糖値が徐々に上昇して発症する場合が多い。2型糖尿病は病態の診断が治療方針を決める際に大切で,濃厚な家族歴があることや,肥満を伴わない高血糖はインスリン分泌低下が病態の主体にあることを疑い,逆に家族歴に乏しく肥満を伴う高血糖はインスリン抵抗性が病態に関わっていることを疑う。
1型糖尿病が疑われる著しい高血糖の病状の多くは,入院を要する場合が多い。全身状態が悪い場合には,高血糖による浸透圧利尿を背景とする脱水に対する治療とともに,インスリン注射療法を開始する。毎食前の超速効型インスリンと,1日1回の持効型インスリンを組み合わせたインスリン頻回注射療法(強化療法)を開始することが多い。1型糖尿病の病態やカーボカウント(炭水化物量の計算方法)に対する患者の理解が深まってきた時点で,持続皮下インスリン注射療法(インスリンポンプ療法)も検討する。
〈肥満を背景とする病態の場合〉
食事・運動療法と経口血糖降下薬で,十分な血糖および体重のコントロールが困難な2型糖尿病では,GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬による治療を検討する。
〈サルコペニア高齢2型糖尿病患者〉
トルリシティⓇ注アテオスⓇ(デュラグルチド)に限っては,GLP-1受容体作動薬だが食欲抑制作用が比較的弱いため,肥満はなく血糖コントロールが不十分な2型糖尿病治療に使用する場合がある。
〈経口血糖降下薬で十分なコントロールが得られない場合〉
持効型インスリンを1日1回注射することで,相対的インスリン不足を補う治療を検討する。インスリンとGLP-1受容体作動薬の混合製剤も選択肢となる。