バルサルタン論文不正疑惑で日本高血圧学会(梅村敏理事長)は3月27日、VART Studyの主任研究者で同学会理事の小室一成氏(東大教授)を厳重注意処分とした。
学会では同研究の問題点として、(1)解析担当者がバルサルタンを販売するノバルティス社社員に解析の一部を委託、(2)研究を実施した千葉大の調査で研究者が事実と異なる報告、(3)図表の血圧値が両薬剤で反対に記載―と指摘。その上で、これらの問題を小室氏は千葉大調査が公表されるまで認識しておらず、「主任研究者として各研究者への監督に不適切な点があった」とした。さらに、利益相反に配慮不足があり、同研究のサブ解析論文が掲載誌から撤回されたことにも責任があるとした。
千葉大調査は昨年7月、VART Studyについて「意図的操作の可能性が否定できない」と指摘している。この問題について学会では、小室氏の反論書によれば千葉大調査に議論の余地があることが窺えるとし、また今後、ノバ社社員の公判で新事実が明らかになる可能性があることを鑑み、現時点では厳重注意処分とした。
一方、小室氏が現在所属する東大も3月31日にVART Studyの調査結果を公表。小室氏に不正行為は認められないと結論づけたが、研究体制に問題があったことは否めないとして30日、医学系研究科長が口頭で小室氏を注意した。