Kyoto Heart Studyの結果が欧州心臓病学会で発表されたとき,会場からは“too good to be true ! ”という声が上がったという。それほど,この試験の結果は,それまでのバルサルタンを含むARBと,ほかの降圧薬との比較試験の結果からはかけ離れているものであった。それ以前にLancet誌に掲載されたJikei Heart Studyについても同様の指摘がされていた。
また,このような結果が出たメカニズムの1つとして,PROBE(Prospective Randomized Open Blinded-Endpoint)法で行われているにもかかわらず,主治医の判断がイベント発生の有無を左右しうる狭心症,一過性脳虚血発作(transient ischemic attacks:TIA),心不全による入院などの,いわゆるソフトエンドポイントをエンドポイントとして採用していることが指摘された。
実は当時,日本の多くのほかの循環器臨床試験においても,被験者のリクルートのしやすさからPROBE法が選択され,ハードエンドポイントの発生数が少ないことを補うためにソフトエンドポイントをエンドポイントに含めていた。ただし,これほど大きな有意差がついたものは,一連のバルサルタン試験以外にはなかった。
2012年,京都大学医学部附属病院循環器内科の由井芳樹氏が,一連のバルサルタン試験に対する疑念として,バルサルタン服用群とコントロール群間の平均血圧が標準偏差(SD)とともに一致することが多すぎるのではないか,と指摘するコメントをLancet誌上で公表した1)。
具体的な値を表1に示す。とりわけKyoto Heart Studyの一致率が高いことがわかる。
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