ディオバン事件やSTAP細胞など日本で頻発する研究不正に対し、研究者コミュニティーが自主的・自律的に対応する全国拠点を目指して今年4月に設立された一般財団法人公正研究推進協会(APRIN、理事長=浅島誠東京理科大副学長)が20日に記者会見を行った。理事には元日本学術会議会長の吉川弘之氏のほか、医学、理工学、人文学など幅広い領域の研究者が名を連ねた。
会見で浅島理事長は今後の活動について、現在、500以上の大学・研究機関が利用している研究倫理の教育教材、CITI(Collaborative Institutional Training Initiative) Japan elearning(用語解説)を発展させて研究者の行動規範教育に当たるほか、セミナーの開催、講師の派遣、さらに研究機関の間で不正の対応に格差があることから、事例集を作成するなどして対応の均てん化を図るとした。
また市川家國理事(日本医学会連合研究倫理委員会委員長)は、引用回数が多い撤回論文の上位10論文のうち1位と7位が日本人によるものであることや、過去に1人の日本人研究者が183の不正論文を作成していたことなどを紹介し、日本の科学に対する危機感を表明。その上で、研究者のみならず研究機関の執行部も研究倫理について学ぶ必要性を指摘するとともに、「周囲の研究者が不正をしていたらそれを正すのも研究者の責務。(隠蔽するのではなく)そういう風に文化を変えることが必要だ」と訴えた。
●用語解説
【CITI Japan elearning】
信州大や東京医歯大、福島県立医大、北里大、上智大、沖縄科学技術大学院大が提携して研究者に倫理教育を行う「CITI Japanプロジェクト」のインターネットを通じた学習システム。500以上の大学・研究機関で38万人が利用した。プロジェクトは今年度までの5年間は文部科学省の採択事業「研究者育成の為の行動規範教育の標準化と教育システムの全国展開」(代表校:信州大)として行われており、来年度からはAPRINが引き継ぐ。