▼一定の基準を満たした調理済み食品に表示できる「健康な食事」の認証マークを6日、厚労省の有識者検討会が決めた。来年度から認証制度を開始する。導入の狙いの1つは、現状の摂取量では過剰か不足している栄養素を理想的な摂取量に近づけ、生活習慣病を予防することだ。2015年度版「日本人の食事摂取基準」で設定する栄養素の目標量と2012年国民健康・栄養調査の摂取量を比較すると、食物繊維とカリウムが不足し、食塩が過剰になっている。
▼6日に取りまとめられた報告書は認証マークの仕組みについて記載しているだけではなく、日本人の健康・栄養に関する状況の変遷を整理した上で、ライフステージ別に現在の課題を解説しており、資料としても興味深い内容だ。
?現在の問題の背景には、戦後から1970年代にかけて日本人の健康・栄養状態が栄養不良から肥満へと移行したことがあると指摘する。今の80代が20代だった時期は栄養不良による身体症候などが問題だった1950年代で、今の40代が20代だった時期は肥満が増加した1990年代だ。現在の高齢者は栄養不良の時代に20代を過ごし、40歳代の者は既に肥満や栄養素の偏りが問題となっている社会で20代を過ごしてきたことになる。
▼その上で、ライフステージごとに課題をみると、まず高齢者は低栄養傾向の者が70歳以上で男性14.5%、女性で22.5%に上り、加齢に伴い、買い物や料理が不便になることが指摘されている。成人については、男性では肥満の割合が約3割に上るのに対し、20代の女性のやせの割合が約2割を占める。男性や20代女性では食事作りの機会が少なく、外食の頻度が高い傾向がみられる。子どもでは肥満傾向が約1割にみられ、食事作りや誰かと共に食事するといった生活体験が乏しいとの調査結果がある。さらには近年、満足に食事もとれない「子どもの貧困」が社会問題となっている。
▼導入される認証マークの仕組みは、このうち成人男性や20代女性、料理が困難になった高齢者が主なターゲットになると考えられる。我が国では歴史的に健康と栄養の研究や教育が広がらず、日本の食事に関する研究も十分なされているとは言えないのが現状だ。今後厚労省が策定する認証マークのガイドラインには、日本の食事のエビデンス充実に向け、制度導入の効果を検証する仕組みを盛り込むことが必要ではないか。