【Q】
妊娠31週で,重症妊娠高血圧腎症に起因すると考えられる常位胎盤早期剥離と子宮内胎児死亡をきたした初産婦が搬送になりました。常位胎盤早期剥離の発症は推定6時間前で,子宮は板状硬を呈し,子宮口は堅く閉鎖し,子宮出血は凝固しません。このような場合の死胎児の娩出方法と子宮摘出を回避するための輸血療法のポイントについて,順天堂大学・板倉敦夫先生にご教示頂ければ幸甚です。【A】
米国の教科書では胎児死亡となった常位胎盤早期剥離は「経腟分娩」と記載されています。しかし,多くのわが国の施設では帝王切開を行っています。一番の理由は,わが国では産科DIC(disseminated intravascular coagulation syndrome:播種性血管内凝固症候群)時の出血量を減らすために補充が必要な凝固因子として,濃縮製剤が利用できない施設が多いためです。