株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

免疫調整薬チオプリン製剤の使いわけのコツ 【まず炎症性腸疾患(IBD)に対して保険適用となるAZAを第一選択とする】

No.4793 (2016年03月05日発行) P.58

竹島史直 (長崎大学病院消化器内科准教授)

登録日: 2016-03-05

最終更新日: 2018-11-27

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【Q】

患者の増加に伴い,クローン病や潰瘍性大腸炎を治療する機会が増えました。欧米では,寛解維持療法として免疫調整薬であるチオプリン製剤が有効であることが証明されており,私自身も患者に積極的に使用しています。ところが,日本人と欧米人では代謝酵素活性が異なるためか,副作用が多いと感じています。現在,チオプリン製剤としてアザチオプリン(azathioprine:AZA)と6-メルカプトプリン(6-mercaptopurine:6-MP)の2種類がありますが,一方で副作用がある場合,他方は使用できないのでしょうか。また,使いわけのコツがあれば教えて下さい。長崎大学・竹島史直先生のご教示をお願いします。
【質問者】
松本主之:岩手医科大学消化器内科教授

【A】

チオプリン製剤には,AZAと6-MPがあり,AZAは内服後,グルタチオンの存在下に非酵素的に代謝され,6-MPとなります(図1)。これらは,炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)の寛解維持療法において大変重要な役割を果たします。一方,ご指摘のように,これらの薬剤は副作用が多い(10~30%)ことでも知られ,使用においては本剤の特徴を熟知し,十分注意を払う必要があります。
チオプリン製剤の短期的な副作用には,用量非依存性でアレルギー機序により生じるものと,用量依存性に生じるものがあります。いずれも投与初期3~4週以内に生じるため,治療開始後1カ月間は,1週ごとの診察と採血とによるモニタリングが必要になります。
アレルギー機序により生じる副作用には,発熱,筋肉痛,関節痛,発疹,嘔気・嘔吐,肝機能障害,膵炎などがあり,この中には,AZAに存在し,6-MPにはないイミダゾール環に起因する症状があります。そのような症例では,AZAを6-MPに変更することで症状が消失し,安全に使用できる場合がありますので,AZA不耐の患者においては,チオプリン製剤のスイッチは考慮すべき治療法と考えます。膵炎も同様にAZAから6-MPへのスイッチにより使用可能となる場合がありますが,逆に再投与により重症化することもあるため,チオプリン製剤の再投与には厳重な注意が必要です。
用量依存性に生じる副作用には,脱毛,骨髄抑制,肝機能障害などがあります。本剤の至適量は,人種差,個人差が著しく,これはチオプリン製剤の代謝に関わるthiopurine S-methyltransferase(TPMT)活性の違いや同時に服用している内服薬の影響を受けやすいためです。したがって,投与開始時には,AZAであれば25mg,6-MPであれば10~15mg程度の少量から開始し,副作用のないことを確認しながら増量するほうが安全です。副作用がみられた場合でも,薬剤の一次的な中止と減量による再投与が可能な場合も多く経験しますので,きめ細かい用量調節が重要となります。
使いわけに関しては,IBDに対して保険適用となる薬剤はAZAのみですから,AZAを第一選択としています。その他の薬剤でアレルギーを示した症例や低体重の患者では,少量投与が可能なことから,当初より6-MPを使用しています。

【参考】

▼ Lees CW, et al:Aliment Pharmacol Ther. 2008;27(3):220-7.
▼ McLean LP, et al:Expert Rev Gastroenterol Hepatol. 2014;8(3):223-40.

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top