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グルカゴンとインスリンの関係についての最新知見

No.4707 (2014年07月12日発行) P.64

北村忠弘 (群馬大学生体調節研究所代謝シグナル研究展開センター代謝シグナル解析分野教授)

登録日: 2014-07-12

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

グルカゴンとインスリンは互いに拮抗するホルモンであるという定説を覆すデータが最近出たと聞いた。その詳細を。 (東京都 S)

【A】

生理学の教科書にはグルカゴンは肝臓の糖産生を促進し,血糖値を上昇させるホルモンだと記載されている。しかしながら,そう単純でないことが最近報告された(文献1)。この報告によると,グルカゴンは肝臓に直接作用すると糖産生を促進するが,血液脳関門を通過したグルカゴンが視床下部を刺激すると,迷走神経を介して再び肝臓に作用し(脳─肝臓連関),今度は糖産生を抑制することが明らかとなった。肝臓への直接作用に比べ,脳を介した作用は30~60分程度遅れて起きることから,グルカゴンはいったん上昇させた血糖値を下げる作用も併せ持つことになり,単純なインスリンの拮抗ホルモンではない可能性が示唆される。
そもそも,従来からインスリンもグルカゴンも脳に直接作用させると満腹中枢を刺激し,胃排泄を遅延させることで,食欲を抑えることが知られており,その意味でも拮抗ホルモンではない。また,現在使用されているグルカゴン測定系には特異性の面で問題があり(文献2),その測定結果から導かれてきた,グルカゴンがインスリンの拮抗ホルモンであるという概念にも限界がきている。
最近のインクレチン関連薬(DPP-4阻害薬やGLP-1受容体作動薬)の臨床応用に伴って,グルカゴンが再注目されているが,今後,新たな特異的測定系を用いてグルカゴンを再評価する必要性に迫られている。

【文献】


1) Mighiu PI, et al:Nat Med. 2013;19(6):766-72.
2) Edgerton DS, et al:Nat Med. 2013;19(6):674-5.

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