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同意文書のあれこれ

No.4708 (2014年07月19日発行) P.68

竹中郁夫 (弁護士)

登録日: 2014-07-19

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

諸種の検査・治療(輸血など)に際し,文書による方針説明を行っている。同意文書に日付を記載して患者の署名,説明医師・病院側立会人の署名を実施しているが(電子カルテではない),患者側に交付するのは原本でないと不都合か。原本は病院側がカルテに綴じ込んで,写し(コピー)を患者に渡すことでよいか。また,医療内容で制約があるか。 (広島県 K)

【A】

まず文書の性質の説明から始める。
「原本」とは,作成者が一定の内容を表示するため,確定的なものとして最初に作成したものをいう。
これに対し,「写し」とは,原本と同一の文字・符号を用いて,原本の内容を完全に転写したものをいう。通常,写しは「謄本」などと呼ばれることが多い。
また,「原本」と「写し」という考え方のほかに,「正本」という考え方がある。正本は,謄本の一種であるが,法令の規定に基づいて権限のある機関が特に正本として作成した原本の写しであって,法令の規定により,原本を一定の場所に保存することを要する文書について,その効力をほかの場所で発揮させる必要がある場合に,原本と同一の効力を有するものとして作成されるものをいう。
正本には,これが正本である旨の認証的文言の記載と作成権限者の署名捺印がなされる。
裁判所の判決正本の末尾には書記官によってこのような記載がなされる。 
ところで,同意文書については,原本も写しも内容は同一であるから,どのような医療内容であっても,どちらをどう使用しても支障はないであろう。
ただ,同意文書も診療の記録の一部であるとすれば,診療録として綴ることが要請される(医師法第24条)が,その保存のためには写しより原本が望ましいと言えよう。
他方,患者にとっても自己の重要な記録というべき文書であるから,これも写しよりは原本のほうが望ましいと言えば望ましいと言える。
このような両立しえない関係にあることから,患者に渡す写しに,判決の正本と同じように,これは診療録に綴じ込んだ原本と同一のものであると医師の署名捺印を加え,真正性の確保に配慮すれば,患者の期待する証明力も確保できるので,質問のように原本は診療録に,写しを患者にということで特に問題になるということはないであろう。

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