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痛風発作時の尿酸降下薬投与における注意点

No.4733 (2015年01月10日発行) P.58

山中 寿 (東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター教授・所長)

登録日: 2015-01-10

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

痛風発作時に尿酸を下げる薬を使うのはよくないとされているが,それはなぜか。また,そのような不具合が生じる頻度を。
(神奈川県 T)

【A】

痛風発作は,関節内に沈着した尿酸塩結晶が引き起こす結晶誘発性関節炎である。痛風患者の関節内には,高尿酸血症が長期間持続した結果として析出した尿酸塩が沈着しており,それが何らかの誘因で関節腔内に剥脱することによって関節炎が引き起こされる。また,尿酸塩の剥脱の主たる誘因は,関節液中の尿酸塩濃度の急激な低下と関節に対する物理的な刺激である。したがって,痛風発作中に血清尿酸値を低下させると,尿酸塩の剥脱が促進され,多くの尿酸塩結晶が関節液中に生じて炎症を誘発するので,関節炎はさらに激しくなる可能性が高い。ただし,痛風発作中に尿酸降下薬を投与した場合に関節炎が増悪する頻度を調べる研究は,倫理的にも実施不可能であるため報告がなく,その頻度は明らかではない。
なお,痛風患者に尿酸降下薬を投与開始した場合にも,関節液中の尿酸塩の剥脱が促進されて,痛風発作を誘発することがある。筆者らは,痛風発作を2回以上経験した痛風患者350例に尿酸降下薬の投与を開始したところ,132例(37.7%)が1年以内に痛風発作を経験したことを報告した(文献1)。また,フェブキソスタット臨床試験で,フェブキソスタット40mgを投与した場合の痛風関節炎の頻度は10.6%であった(文献2)。
以上から考えると,既に尿酸塩結晶の剥脱が生じている痛風発作中に尿酸降下薬を投与した場合に関節炎が増悪する可能性はかなり高いと考えられる。したがって,アロプリノール,ベンズブロマロン,フェブキソスタットなどすべての尿酸降下薬の添付文書には,「痛風関節炎(痛風発作)が認められた場合は,症状がおさまるまで,本剤の投与を開始しないこと」という一文が記載されているので,注意が必要である。

【文献】


1) 作山理子, 山中寿, 他:プリン・ピリミジン代謝. 1993;17(2):81-9.
2) 帝人ファーマ株式会社:フェブリクR添付文書.

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