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過形成ポリープの病理

No.4767 (2015年09月05日発行) P.67

八尾隆史 (順天堂大学大学院医学研究科人体病理病態学 教授)

登録日: 2015-09-05

最終更新日: 2018-11-27

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【Q】

胃や大腸の過形成ポリープとは,遺伝子変異などを伴う腫瘍なのでしょうか。その病理的にあくまで「過形成」,つまり正常細胞の応答として細胞増殖が起こるという考えでよいのでしょうか。順天堂大学大学院・八尾隆史先生にご解説をお願いします。 (北海道 K)

【A】

病理学的に,過形成とは細胞数の増加による組織あるいは臓器容積の増大であり,非腫瘍性変化です。胃や大腸の過形成ポリープは細胞の増加を伴い隆起を形成し,細胞増殖が盛んなため増殖細胞は核腫大を示しますが,領域を持った異型は示さず,正常粘膜と同様な細胞分化を保持していることから,非腫瘍性病変と考えられてきました。
胃の過形成ポリープは,多くはHelicobacter pylori(Hp)感染に伴う胃炎において,傷害された胃粘膜の過剰な再生性変化のため生じ,Hpの除菌により胃炎の活動性が抑えられると退縮・消失することも知られています。胃の過形成ポリープは非腫瘍性病変ですが,癌併存の危険性があるので,十分な経過観察が必要な病変です(文献1)。
大腸の過形成ポリープは,直腸に好発する数mm大の扁平隆起であり,組織学的には鋸歯状構造を示しながら延長した陰窩上皮からなる病変です。従来は,大腸の過形成ポリープは癌化の危険性のない非腫瘍性病変とされていました(文献2) 。近年,鋸歯状構造を示し過形成ポリープと同様の細胞からなる病変であるものの,不規則な核腫大や構造の不整(陰窩深部の拡張や変形,不規則分岐など)を伴うものが指摘され,sessile serrated ad-enoma/polyp(SSA/P)という名称が用いられています。SSA/Pは,右側大腸に好発する数mm~数cm大の平坦な病変で,組織像としては腫瘍性と判定できない病変ですが,高頻度にBRAF遺伝子変異を認めることから,実質的には腫瘍性病変という認識もなされています(文献2,3)。
そして,癌化の正確な頻度は不明ですが,SSA/Pは癌化の危険性のある病変としても注目されています。さらに,SSA/Pとは判定できない過形成ポリープの段階から既にBRAF変異が生じていることも報告されており(文献3) ,大腸の過形成ポリープに関しては腫瘍性であるかどうかの議論がなされている最中です。
このように,過形成と考えられていた病変も腫瘍性である可能性が指摘されています。病理学的な解明は興味のあることですが,臨床的には過形成か腫瘍かということより,癌化を含めた病変の自然史を知ることが重要です。病変の本質の解明については,今後のさらなる解析に期待したいと思います。

【文献】


1) 八尾隆史, 他:胃と腸. 2012;47(8):1192-9.
2) 八尾隆史, 他:日消誌. 2015;112(4):669-75.
3) 菅井 有, 他:日消誌. 2015;112(4):661-8.

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