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高血圧患者の低レニン・低アルドステロン値をどう考える?

No.4796 (2016年03月26日発行) P.56

中島康代 (群馬大学大学院医学系研究科病態制御内科学)

山田正信 (群馬大学大学院医学系研究科病態制御内科学 教授)

登録日: 2016-03-26

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

69歳,女性。初診時200/90mmHg程度の高血圧。高血圧指摘は6年ほど前から。最近の薬剤歴なし。眼底はS2H2,眼底出血なし。理学的所見や心電図・胸部X線に異常なし。二次性高血圧除外のために検査し,Cr 0.53mg/dL,K 4.3mEq/L,検尿異常なし,30分の安静臥床後,コルチゾール,カテコールアミン,TSH正常域,血漿レニン活性(plasma renin activity:PRA) 0.1ng/mL/時未満,血漿アルドステロン濃度(plasma aldosterone concentration:PAC) 46pg/mL。PAC/
PRA>200の状態ですが,PAC<120pg/mLなので,原発性アルドステロン症は除外できるでしょうか。 (香川県 T)

【A】

低レニン性高血圧では,原発性アルドステロン症(primary aldosteronism:PA)が有名ですが,わが国では塩分感受性の本態性高血圧が多く,これらの症例の多くは低レニンを示します。よって,低レニン性高血圧の鑑別は非常に重要です。
PAの診断指針では,高血圧症初診例の全例に二次性高血圧症の鑑別が求められており,全高血圧症例の約10%がPAと報告されています。ガイドラインでは,PAのスクリーニングは同時測定のPAC/PRA(aldosterone/renin ratio:ARR)が200超の場合にPAを疑い,専門医療機関へ紹介するように示しています。しかし,本例のようにPRAが0.1未満の症例は,全例がPAのスクリーニング対象になってしまいます。さらに,PACの絶対値>120~150pg/mLも考慮するよう示されていますが,PACの絶対値>120~150pg/mLのみの症例を対象とすると,軽症のPAを見逃す可能性があります。実際,PAC<100pg/mLである軽症のPAも存在するので,PAを完全には否定できません。
PRAが低値を示す病態では,糖尿病や慢性腎臓病で低レニン性低アルドステロン血症を示すこともあります。甘草摂取が原因となる偽性アルドステロン症も,低レニン性低アルドステロン血症を示します。甘草は,健康食品や漢方薬に多く使用されるため,摂取が見逃されることも少なくありません。稀な疾患では,低レニン性高血圧を示す遺伝病としてリドル症候群や偽性低アルドステロン症2型などがあります。また,PRAは変動要因の多い項目であることが知られています。高齢者や高塩分食などで,PRAは低値となります。β遮断薬,交感神経抑制薬,NSAIDsなどの薬剤の影響でも,PRAは低値を示すことがあります。また,PACは日内変動により午後に低値になるため,測定時間も考慮が必要です。
以上,本例のようにPRAの抑制が強く,PACが高値でないにもかかわらずARR>200となる病態や環境は,日常臨床においては,PAでなくても多く経験することになります。初回採血のみでARR>200を評価することは困難な場合が多く,年齢,既往歴,食生活,投薬歴,測定条件を再検討して,ARR再検を行うことが重要になります。また低カリウム血症もPAに必須ではないため,本例のようなカリウム正常の症例であってもPAは否定できません。

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