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アポリポ蛋白Eの検査の仕組みは?【phenotypeとgenotypeの違い】

No.4807 (2016年06月11日発行) P.61

三井田 孝 (順天堂大学大学院医学研究科 臨床病態検査医学教授)

登録日: 2016-06-11

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

アポリポ蛋白Eの検査時に表現型(phenotype)と遺伝子型(genotype)のどちらかが求められますが,この2つにはどのような差異があるのでしょうか。
報告形式としてはE2/2,E3/2,E3/3,E4/2,E4/3,E4/4となっており,同じように見えます。 (青森県 M)

【A】

血液中の脂質は,蛋白質と結合し,リポ蛋白と呼ばれる複合体をつくっています。蛋白質の大部分を占めるのがアポリポ蛋白(アポ蛋白)です。アポリポ蛋白E(アポE)はそのうちの1つで,TGに富むリポ蛋白やHDLと結合しています。
アポE遺伝子には,ε2,ε3,ε4の3つの対立遺伝子(アレル)があり,両親から遺伝した2つの対立遺伝子の組み合わせにより,6つの遺伝子型(ε2/2,ε3/2,ε3/3,ε4/2,ε4/3,ε4/4)にわけられます。アポE遺伝子によって合成されるのが,E2,E3,E4の3つのアイソフォームで,遺伝子型同様に,6つの表現型(E2/2,E3/2,E3/3,E4/2,E4/3,E4/4)を示します。
アポEは,299個のアミノ酸から成る分子量が約3400の蛋白です。112番目と158番目のアミノ酸は,E2でシステイン/システイン,E3でシステイン/アルギニン,E4でアルギニン/アルギニンです。E2/2は家族性Ⅲ型高脂血症と,E4はアルツハイマー病や高LDL-C血症と関連することが知られています。
アポEの遺伝子型の解析には,一般にrestriction fragment length polymorphism (RFLP)法を用います。
本法では,抽出したDNAから対象の遺伝子をPCRで増幅し,制限酵素(特定の配列を認識して作用する)でPCR産物を切断します。アポE遺伝子型の検査では,アルギニンに対応する配列を含む部位を切断する制限酵素(HhaⅠ)を用います。アイソフォームによってDNA断片の長さに差が生じるので,これを電気泳動で分離して,バンドのパターンから遺伝子型を判定します。
一方,アポEの表現型の解析には,等電点電気泳動法を用います。E2,E3,E4は,それぞれ等電点が異なるため,別のバンドとして検出されます。当然,ほとんどの場合は,アポE遺伝子型と表現型は一致します。
しかし,等電点電気泳動法では,等電点が異なれば,上記以外のアイソフォームも検出できます。脂質異常症や冠動脈疾患の患者では,E5やE7などのアイソフォームのバンドを認めることがあります。それ以外の変異アポEも,等電点の違いにより移動度がほかと異なれば,検出可能です。逆に,変異アポEであっても,等電点がほかのアイソフォームと同じなら区別できません。遺伝子型をRFLP法で決定している場合には,このような変異アポEは検出できません。アポEの異常が疑われるのにRFLP法や等電点電気泳動法で異常を認めない場合は,アポE遺伝子の配列を直接決定するダイレクトシークエンス法を行う必要があります。

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