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双胎間輸血症候群の治療

No.4720 (2014年10月11日発行) P.58

石井桂介 (大阪府立母子総合医療センター産科部長)

登録日: 2014-10-11

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

双胎間輸血症候群は,治療しなけば双子の胎児どちらも救命が困難な病気と聞いていますが,どのようなメカニズムにより発症するのでしょうか。また,最近では羊水除去術よりも,胎児鏡を用いたレーザー手術が行われることが多いと聞きますが,手術の詳細についてお教え下さい。大阪府立母子総合医療センター・石井桂介先生に。
【質問者】
榎本隆之:新潟大学大学院医歯学総合研究科 産科学婦人科学教授

【A】

双胎間輸血症候群(twin-twin transfusion syndrome:TTTS)は,一絨毛膜双胎の約1割に発症する予後不良な疾患です。胎児死亡・新生児死亡の頻度が高く,生存例でも神経学的後遺症が懸念されるハイリスク状態です。一絨毛膜双胎の胎盤にある吻合血管を介する両児間の血流不均衡が病因と考えられています。
一方の胎児(供血児)では,循環血液量が少ないため,乏尿となり羊水過少をきたしますが,同時に発育不全や低酸素状態などを合併します。一方,他方の胎児(受血児)は,循環血液量が過剰となるため,心不全や胎児水腫をきたし,多尿から羊水過多となり,結果的に流産・早産のリスクが高くなります。超音波検査を用いた診断基準は,「一児が羊水過少」と「他児が羊水過多」の両方を満たすものであり,Quinteroの重症度分類が参考にされます。
胎児鏡下レーザー凝固術(レーザー手術)は,TTTSの第一選択治療です。ランダム化比較試験を含むエビデンスの積み重ねにより,レーザー手術は従来の治療であった羊水除去術に比して,児の生存率および神経学的異常に関して予後を改善することが確認されました。わが国では2002年より本手術が導入されましたが,以後少なくとも一児の生存率が9割に至ることが明らかとなり,2012年には保険適用されました。
レーザー手術の適応は妊娠26週未満のTTTSです。区域麻酔または局所麻酔下に経母体腹壁的に子宮内に挿入した径3~4mmの胎児鏡を用いて,複数の胎盤吻合血管を同定し,そのすべてをNd-YAGレーザーにて凝固することによって双胎間の血行を遮断するというものです。循環血液量の不均衡の改善に伴い,徐々に羊水量の異常,胎児血流異常などの異常所見が改善します。近年では,妊娠26週以降の症例や品胎の症例にも適応が拡大されました。

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