【Q】
関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)は,多彩な肺病変を合併することが知られています。各々の肺病変の特徴と抗リウマチ薬,生物学的製剤などで治療していく際のチェックポイントをお教え下さい。中でも,診断当初から肺病変を合併しているRA患者を治療するときのリスク,注意点などについて,新横浜山前クリニック・山前正臣先生にお尋ねします。
【質問者】
吉田智彦:世田谷リウマチ膠原病クリニック院長
【A】
1)合併している肺病変の診断を確実に
RAに合併する肺病変について難しく考える必要はありません。まず何が合併しているのかを診断していきます。RAに合併する肺病変には,慢性炎症性気道病変,間質性肺炎や胸膜病変があります。アナムネ(既往歴)聴取,聴診,酸素濃度測定や胸部単純X線撮影を行い,必要であれば胸部CTを撮影します。
RAには,RAに合併する間質性肺炎(RA-associated interstitial lung disease:RA-ILD),二次的な器質化肺炎(secondary organizing pneumonia:SOP),RAの治療に伴う感染症,慢性炎症性気道病変,胸膜病変,抗リウマチ薬による薬剤性肺炎などが合併します。これらを鑑別していくことになります。
(2)間質性肺炎の診断のポイント
RA-ILD発症については,外来患者や剖検例を対象とした解析では19~35%のRA患者に合併するとされています(文献1)。当院および関連病院における新患340名の解析においても22.4%にRA-ILDの合併がありました。しかし,最近の各国の多数例の検討では3.5~7.7%と言われています。
RA-ILDの発症リスクは以前より,男性のRA, 高齢者,関節炎の活動性などが指摘されてきましたが,近年,抗シトルリン化ペプチド抗体(anti-citrullinated peptide antibody:ACPA)の関与が判明しています(文献2)。ACPA陽性RA患者のほうが,胸部CTにおける線維化所見が強かったり,呼吸機能検査で拘束性障害や拡散能の低下を認めたりすることがわかっています。また,すべてのRA-ILDが進行性であるわけではなく,通常型間質性肺炎(usual interstitial pneumonia:UIP)パターンをとる症例や間質性肺炎の広がりが大きい症例で進行性であることが報告されています。
当院のRA-ILD 81例の解析においても,蜂窩肺を主病変とし,その範囲が胸部CTの50%以上である場合には呼吸器症状の増悪を有意に認めています。
(3)RA治療中に肺病変が悪化したとき
たとえ,もともとRA-ILDが存在していたとしても,そのほかの原因で悪化してきている可能性を考慮します。これには薬剤性肺炎やニューモシスチス肺炎などの日和見感染症を含む感染症が含まれます。特にほかの原因が完全に診断できるまでは,感染症の可能性を否定せずに診療を続けていきます。
代表的な薬剤性肺炎としては,メトトレキサート肺炎があります。投与開始1年以内に多く,90%は2年以内に発症することがわかっています。実臨床ではCarlsonの基準が診断に多く用いられています。もともと肺病変を持っている症例に多いとされてきましたが,最近報告された前向き研究の結果では,肺病変がなくても発症することがわかっています(文献3)。
そのほかの抗リウマチ薬でも,薬剤性肺炎の報告があります。生物学的製剤においても同様で,投与開始後の呼吸器症状,聴診所見,定期的な画像診断が必要になります。
【文献】
1) Koduri G, et al:Rheumatology(Oxford). 2010;49 (8):1483-9.
2) Giles JT, et al:Ann Rheum Dis. 2014;73(8): 1487-94.
3) Sathi N, et al:Clin Rheumatol. 2012;31(1):79-83.