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花粉症と咳の関連

No.4738 (2015年02月14日発行) P.63

上條 篤 (埼玉医科大学耳鼻咽喉科准教授)

登録日: 2015-02-14

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

花粉飛散シーズンに咳を訴える患者さんがいることは知られていますが,合併率はどの程度でしょうか。また,原因として副鼻腔炎の合併により後鼻漏で咳が起きる,さらに喉頭アレルギーやアトピー咳嗽,咳喘息などが考えられますが,鑑別診断,原因に応じた治療を,年齢やアレルゲンによる差異などもあれば併せてご教示下さい。埼玉医科大学・上條 篤先生に。
【質問者】
池園哲郎:埼玉医科大学耳鼻咽喉科教授

【A】

スギ・ヒノキ花粉飛散期における咳の合併率は報告によって異なりますが,30~60%程度とされています。当然ながら,飛散花粉数によって大きく影響を受けると思われます。
咳の原因について詳細に検討した報告は多くありませんが,鼻症状,特に鼻閉が強くなると咳が出やすいとされます。鼻閉によって口呼吸になり,吸気が浄化・加湿されず直接喉頭に入ることにより,乾燥や炎症を引き起こすことが原因の1つでしょう。また,花粉抗原によるI型アレルギーである喉頭アレルギーやアトピー咳嗽も咳の原因になるとも言われています。
さらに,後鼻漏を喀出しようとして咳が誘発される,鼻粘膜への刺激が上気道の知覚神経と副交感神経を介した神経反射として咳を誘発する可能性,咳喘息や喘息による咳など,原因は多岐にわたり,年齢によっても咳を引き起こす主因が異なる可能性があります。小児では喉頭アレルギーやアトピー咳嗽(両者はほぼ同一の疾患と考えてもよいでしょう)による咳は少ないことが示唆されています。むしろ,後鼻漏による咳が多い印象です。しかし,咳の原因を同定することは必ずしも容易ではなく,今後の詳細な検討が待たれます。
治療についてですが,喉頭アレルギーやアトピー咳嗽では通常の花粉症の治療と同様に第2世代抗ヒスタミン薬が奏効することが期待されます。鼻閉が間接的原因となる咳嗽にはロイコトリエン受容体拮抗薬やステロイド鼻噴霧薬が有効である可能性があります。後鼻漏によるものでは,鼻粘膜局所処置に加え,第2世代抗ヒスタミン薬やステロイド鼻噴霧薬が有効であると考えられます。これらはいずれも通常の鼻症状に対する治療とも共通するものです。
一方で,このような治療に反応しない咳嗽に対して,私たちはβ刺激薬を投与し,しばしば著効を得ています。β刺激薬は咳喘息や喘息の治療薬であり,通常の花粉症治療が有効でない咳の治療の選択肢となると考えています。
花粉症における咳は3月が最多で,ついで4月,2月の順ですが,この時期はスギ,ヒノキのみならず地域によりハンノキやアカシアなども原因となる可能性が否定できず,今後の検討課題です。

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