(質問者:岐阜県 K)
ブルガダ症候群は,1992年にブルガダ(Brugada)兄弟により報告された特徴的な心電図所見(右脚ブロック様波形とST上昇)を呈し,心室細動による失神や突然死を引き起こす疾患です。ブルガダ型心電図は0.2%程度に出現するため,健診などで指摘されることが多々あります。
患者の約20%に心臓ナトリウムチャネルの遺伝子異常を認めます。働き盛りの30~50歳代の男性に多く(男女比10:1),男性ホルモンとの関連も指摘されています。典型的な心電図波形はコーブド型心電図と呼ばれ,Ⅴ1~Ⅴ3誘導において観察されます。ブルガダ症候群の診断はこのコーブド型心電図をⅤ1~Ⅴ3誘導の1つ以上に認め,①多形性心室頻拍・心室細動,②45歳以下の突然死の家族歴,③典型的コーブド型心電図を示すものが家族内に存在,④電気生理学的検査での多形性心室頻拍・心室細動誘発,⑤失神や夜間の瀕死期呼吸,のうち1つ以上を認めるものとしています。
ブルガダ型心電図を見たら失神と突然死の家族歴の有無を聴取します。失神の既往があっても神経調節性失神であることも多く,失神時の状況を聞くことも重要です。一方,ブルガダ症候群の心電図は日内・日差,季節変動を有し,時には正常化することもあるため,頻回の心電図検査を行う場合があります。コーブド型心電図が通常肋間で記録されない場合でも,抗不整脈薬投与により,もしくは高位肋間記録により顕在化することがあります。診断目的の薬物負荷にはわが国ではピルシカイニド塩酸塩水和物(1mg/kg/10分),海外ではアジマリン(1mg/kg/5分)が頻用されています。薬物負荷後にST上昇が増強し,コーブド型心電図が出現した場合に陽性と判定されますが,既にコーブド型心電図を示している症例には原則として投与しないこととされています。薬物負荷中に,時として心室性不整脈が出現することがあるため,検査は入院にて行います。感度は60~90%と言われています。また,ブルガダ症候群の心電図変化は右室流出路で顕著となるため,Ⅴ1~Ⅴ3誘導を1,2肋間高位で記録したり,深吸気や立位で記録したりすることが心電図を顕在化させる方法として報告されています。
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