老化に関与する遺伝子外因子を,生活習慣の改善や医学的介入により適切に制御することができれば,老化を制御する可能性が高いとされている。抗老化療法の中でも安全性が高く,再現性が高い介入法は,カロリー制限(caloric restriction:CR)と運動である。
CRは老化過程を遅らせて,平均寿命と最大寿命を延長することが報告されている。一方,運動では健康寿命を延長することが報告されている。Masoroらは,CRが寿命延長効果の本質であることを明らかにした。また,寿命を最大にする摂取カロリー量があることから,CRは老化を促進する要因を最小限に軽減する方法であると考察している。
しかし,アカゲザルを用いたCR実験(文献1)では,加齢関連疾患による死亡の場合に寿命延長効果が認められるものの,すべての死亡原因の解析では対照群との違いは見られなかった。また,長期に極端な制限をすることは三大栄養素のバランスの維持が困難となることから,健康障害のリスクとなることもある。
一方,Alzheimer型認知症,Huntington病,筋萎縮性側索硬化症,Parkinson病,脊髄性筋萎縮症のモデル動物に対して,CRはこれら神経疾患の発症を抑制することが報告された(文献2)。CRは難治性疾患の治療戦略としても期待されている。
1) Colman RJ, et al:Science. 2009;325(5937):201-4.
2) Schroeder JE, et al:Biochim Biophys Acta. 2010; 1802(10):840-6.