腫瘍壊死因子α(TNF-α)が炎症の形成に広く関わる主要なサイトカインとして認識されるようになったのは,関節リウマチ(RA)や他の炎症性疾患において抗TNF療法の著しい効果が臨床的に明らかになったからである。わが国では既にインフリキシマブ,エタネルセプト,アダリムマブ,ゴリムマブと,4つの抗TNF生物学的製剤が使用可能であったが,5剤目となる「最後の」抗TNF療法薬として2012年12月に承認されたのがセルトリズマブ ペゴル(文献1)である。
抗TNF療法は,抗炎症効果が従来の抗リウマチ薬に比べて格段に高い事実に加えて,(1)骨関節破壊は進行するものである,(2)慢性持続性疾患であるため治療は生涯必要である,という2つのRAの疾患概念そのものを覆すポテンシャルを持つことがわかった。抗TNF療法がRA治療にパラダイムシフトをもたらしたと言われる所以である。
セルトリズマブ ペゴルは,唯一のペグ化抗TNF抗体である。ペグ化によって半減期が延長しただけではなく,炎症部位への集積が亢進し,抗リウマチ効果の改善が期待された。海外および国内で行われた臨床試験では,メトトレキサートの併用,非併用のいずれにおいても,皮下注製剤としては最も早期からの強力な効果が証明された(文献1,2)。セルトリズマブ ペゴルは,構造的にも臨床的にも,RAに対する第2世代の抗TNF療法薬と位置づけられるかもしれない。
1) Keystone E, et al:Arthritis Rheum. 2008;58(11): 3319-29.
2) Yamamoto K, et al:Mod Rheumatol. 2013;doi:10. 3109/14397595. 2013. 843764. Epub 2013 Nov 1.