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胎児診断,胎児治療

No.4720 (2014年10月11日発行) P.53

新井真理 (東京大学小児外科講師)

岩中 督 (東京大学小児外科教授)

登録日: 2014-10-11

最終更新日: 2016-10-26

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胎児の超音波検査など診断技術が発達し,様々な小児外科疾患でも出生前診断が可能となってきた。診断率は疾患で異なるが,現在では食道閉鎖症,腸閉鎖症,横隔膜ヘルニア,水腎・水尿管症,卵巣嚢腫,腹壁破裂,臍帯ヘルニア,直腸肛門奇形,胎便性腹膜炎,多嚢胞性異形成腎,胆道拡張症,膀胱破裂などの疾患に出生前診断がなされている。患児の情報を出生前に得ることで分娩の時期や方法を適切に選択し,新生児早期に治療開始が可能で,治療成績の向上に寄与している。しかし,すべての疾患の成績向上にはつながっていない。
たとえば横隔膜ヘルニアは,横隔膜の欠損孔より腹腔内臓器が胸腔内に脱出し胸腔内で肺を圧迫して,肺が十分成長できず肺低形成となることが疾患の本態であり,この状態は胎生期の間に進行していく。このような場合には胎児治療によってその進行を止めることも一法である。わが国では胎児胸水に対する胸腔羊水腔シャント術,先天性気管閉鎖狭窄症や胎児頸部腫瘤に対するEXIT(ex utero intrapartum treatment)法,双胎間輸血症候群に対する胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術などが臨床応用されており,諸外国では横隔膜ヘルニア,仙尾部奇形腫,脊髄髄膜瘤などに対する胎児手術も一部の施設で試みられている。
一方で,胎児診断には両親が人工妊娠中絶を選択したり,治療を拒否したりするなどの倫理上の課題もある。また,胎児治療も倫理的に妥当性がある治療とされるためには,治療を行わなければ胎児は重篤な障害を被ることが明確であり,その治療の有効性が明らかで,母体の健康や母親のwell-beingに対するリスクが小さく,母親に適切な説明と同意が得られていることが必要である。

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