全身性エリテマトーデス(SLE)は,若年女性に好発し,自己免疫異常による多彩な自己抗体産生と臓器障害で特徴づけられる慢性炎症性疾患であり,代表的な自己免疫性疾患の1つである。SLEの治療は50年前のステロイドホルモンの導入によりパラダイムシフトを迎えた。すなわち,患者の長期生存が得られるようになったが,副作用の軽減が至上命題となっている。そのために種々の分子標的療法が試されてきたが,この半世紀で認可に至る新規分子標的療法はなかった。
そのような中,2011年3月にSLEの新規分子標的治療薬ベリムマブ(belimumab)が米国食品医薬品局(FDA)に認可された(文献1)。ベリムマブは可溶型B cell activating factor(BAFF;CD257,BLyS,TNFSF13B)を中和する完全ヒト化モノクローナル抗体である。BAFFはB細胞の増殖・分化に関わるサイトカインであり,種々の自己免疫性疾患における病態形成への関与が示唆されている。わが国でもSLEへの適応獲得に向けて第3相試験が進行中である。
ベリムマブは,ステロイドのような劇的な抗SLE効果はないが,クラススイッチしたメモリーB細胞を直接障害しないため,感染症のリスクが少ないとされる。そのため,併用によってステロイドの必要量を引き下げる効果が最も期待される。
1) Navarra SV, et al:Lancet. 2011;377(9767):721-31.