ANCA(抗好中球細胞質抗体)関連血管炎は,顕微鏡的多発血管炎(MPA),多発血管炎性肉芽腫症(GPA),好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)の3疾患に分類される。特にMPAとGPAは予後不良とされていたが,副腎皮質ステロイドとシクロホスファミド(CY)の併用療法により,予後は著しく改善されてきた。しかしながら,既存治療で効果不十分な症例や,副作用のためにCYを使用できない症例も存在する。
キメラ型抗ヒトCD20抗体リツキシマブは,B細胞を枯渇させることで難治性血管炎に対する有効性が期待された。米国と欧州で2つの大規模臨床試験(RAVE(文献1)とRITUXVAS(文献2))が行われ,MPAとGPAの寛解導入率においてリツキシマブはCYと同等であることが示された。さらに,重篤な有害事象の発生率において両群に差を認めなかったが,感染症全体の発現頻度ではリツキシマブ群で高い傾向がみられた。
上記の臨床試験の結果や使用実態をふまえ,2013年6月にリツキシマブがMPAとGPAの治療に保険適用となった。通常,成人にはリツキシマブ375mg/m2を1週間間隔で4回投与する。現状では,MPAとGPAに対するリツキシマブ療法の感染症を含んだ有害事象に関するエビデンスは乏しい。したがって,リツキシマブ療法は緊急時に十分な対応ができる医療施設において,ANCA関連血管炎の治療に対して十分な知識・経験を持つ医師のもとで,本剤の使用が適切と判断される症例においてのみ行うことが望ましい。
1) Stone JH, et al:N Engl J Med. 2010;363(3):221-32.
2) Jones RB, et al:N Engl J Med. 2010;363(3):211-20.