最近,早期の食道癌には積極的に内視鏡粘膜下層剝離術(ESD)が行われている。明らかに上皮内にとどまるがん(M1~2)では,リンパ節転移がみられないことからESDの良い適応となる。粘膜下層深部に浸潤するがん(SM2~3)ではリンパ節転移が40~50%にみられるため,手術中心の治療が選択される。粘膜筋板以深から粘膜下層の浅層(M
3~SM1)ではリンパ節転移が10~20%にあり,原発巣はESDで切除可能であっても,リンパ節転移巣が残存する懸念がある。食道癌手術は侵襲が高度であり,経口摂取量低下,反回神経麻痺,誤嚥性肺炎など術後障害をきたす場合もある。
sentinel node navigation surgery(SNNS)を術前診断と組み合わせることにより,さらに正確に転移リンパ節を診断できる可能性がある。食道のsentinel node(SN)を検出する方法としてはradioisotope(RI)法と色素法が用いられている。炭粉沈着が多い縦隔内リンパ節ではRI法が検出感度に優れている。術前の深達度がT1~T2(cT1~T2)の転移陰性N0(cN0)食道癌57例の検討では,通常のHE標本による転移率は12.3%(7/57)で,免疫組織染色では19.3%(11/57)であった。さらにRT-PCR法では,4例に微小転移が発見された(文献1)。これらの微小転移を含めたリンパ節転移はSNに含まれていた。したがって,術前リンパ節転移陰性例ではSNNSが有効である可能性が高い。
今後,SNNSによりリンパ節郭清が個別化され,ESDとSNNSの組み合わせにより,縮小治療へ貢献できると考えられる。
1) Hagihara T, et al:Ann Surg Oncol. 2013;20(9): 3031-7.