次世代シークエンサーなどの導入により腸内細菌叢研究が爆発的に進み,消化器疾患のみならず代謝疾患,動脈硬化,神経疾患との関連も指摘され,今,消化管を越えて本研究がホットである。
消化管には100兆個以上の細菌が存在し,総遺伝子数はヒト全遺伝子数を凌駕するなど,gut microbiota is an organと言われる所以である。決定的報告は再発性Clostridium difficile腸炎の糞便移植治療(FMT)とバンコマイシン治療との無作為化試験(文献1)である。治癒率は前者93.8%,後者30.8%と圧倒的であった。FMT治療後は腸内細菌叢の多様性が回復し,健常人のそれに復帰していた。筆者らも潰瘍性大腸炎の3剤抗菌薬2週間治療群とプラセボ群の多施設無作為化試験で抗菌薬が有効であった7例の腸内細菌叢遺伝子解析から,治療前は細菌叢の多様性が消失していたが,強力な抗菌薬治療数週後には多様性が健常人パターンに復帰することを報告(文献2)した。潰瘍性大腸炎のFMT治療も少数例の報告では有効例が多いが,いまだcontroversialである。
肥満では,肥満モデルマウスの腸内細菌を無菌マウスに移植すると,移植マウスが肥満になること,痩身者FMT治療によりインスリン抵抗性が改善することなどが報告されている。そのほか,過敏性腸症候群や,腸管自然免疫系を介したパーキンソン病,多発性硬化症,うつ病などの神経疾患,動脈硬化症との関連も示唆され,ドナーの選択が重要となる。
FDAも多額の研究費を注ぐ,注目領域である。
1) van Nood E, et al:N Engl J Med. 2013;368(5):
407-15.
2) Nishikawa J, et al:Scand J Gastroenterol. 2009;
44(2):180-6.