内視鏡技術の向上により,早期胃癌に内視鏡的粘膜剥離術(ESD)が盛んに行われている。『胃癌治療ガイドライン』によると,ESDの適応は臨床的にリンパ節転移がないcN0,粘膜癌(cT1),長径2cm以下で潰瘍を伴わない〔UL(-)〕症例が日常診療で推奨されている。早期胃癌のESD適応拡大病変は,(1)分化型,pT1a,UL(-),2cm以上,(2)分化型,pT1a,UL(+),3cm以下,(3)2cm以下のpT1a,UL(-)の未分化型癌(いずれも脈管侵襲陰性)とされている。適応拡大病変ではリンパ節転移が存在することも考慮する必要がある。sentinel node(SN)を検出することにより,胃切除範囲とリンパ節郭清範囲の縮小が可能であれば,術後QOLの低下を少しでも緩和できる。
わが国で深達度cT1,cT2で長径4cm以内の胃癌に対して,radioisotope(RI)法と色素法を併用してSNと転移検出に関する多施設共同研究が行われた(文献1)。評価可能であった397例中387例(97.5%)でSNが検出された。リンパ節転移は57例にみられ,53例はSNを含め転移が陽性であった。転移の正診率は99%(383/387)であり,偽陰性となった4例は深達度が筋層浸潤(pT2)例か長径が4cm以上であった。以上から,早期癌に対してはSNを応用した手術が可能と考えられた。
今後,ESDの適応拡大症例が増加すると考えられるが,原発巣の完全切除とともにリンパ節転移巣の見落としをなくす努力が必要である。根治性と臓器温存によるQOLの向上を図る上でもSN navigation surgeryの役割は大きいと考えられる。
1) Kitagawa Y, et al:J Clin Oncol. 2013;31(29): 3704-10.