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アレルゲンコンポーネント検査の有用性

No.4766 (2015年08月29日発行) P.48

中島裕史 (千葉大学アレルギー・臨床免疫学教授)

登録日: 2015-08-29

最終更新日: 2016-10-26

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アレルゲン粗抽出物を抗原として用いる従来のアレルゲン特異的IgE検査に加えて,近年,単一の蛋白を抗原とするアレルゲンコンポーネント特異的IgE検査が臨床応用された。わが国では,卵白のオボムコイド,牛乳のカゼイン,α-ラクトアルブミン,β-ラクトグロブリン,小麦のω-5グリアジン,ピーナッツのAra h 2の6項目が保険診療下で測定可能である。食物アレルギーに対する関心の高まりもあって,一般診療においてもアレルゲンコンポーネント検査への理解が求められている。
アレルゲンコンポーネント検査は,(1)多種類の食物粗抽出アレルゲンに検査陽性となった患者における真の感作と交差反応による偽陽性の鑑別,(2)生じうる誘発症状の重症度の予測と,経口負荷試験の必要性の判断,(3)主要コンポーネントに感作されているか否かの確認と,免疫療法に適応があるかどうかの判断,に有用とされる。
具体的には,ω-5グリアジンは即時型小麦アレルギーと小麦依存性運動誘発アナフィラキシーの診断における有用性が示され,オボムコイドは加熱卵に対するアレルギー症状の診断や,耐性を獲得しにくい卵白アレルギーの診断に有用とされる。
最近,保険収載されたAra h 2は,粗抽出ピーナッツ特異的IgEより特異度が高く,ピーナッツ摂取によって重篤な症状が出現しうる患者を,より高い確率で選別できる。ピーナッツアレルギーは,重篤な症状誘発リスクがあるため,明らかな既往がある患者には食物経口負荷試験が推奨されておらず,Ara h 2検査の臨床的有用性は高い。

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