潰瘍性大腸炎は原因不明の慢性炎症性腸疾患であり,臨床経過は再燃と寛解を繰り返す。患者数は増加の一途をたどり,わが国では約17万人を数え,今や消化管の臨床においてcommon diseaseとなっている。近年では,診療ガイドラインが策定され,従来用いられてきたメサラジン製剤やステロイドだけでなく,血球成分除去療法やカルシニューリン阻害薬,チオプリン系免疫調節薬,抗TNF-α抗体製剤など,多岐にわたる治療薬が保険収載されており,その治療は劇的に変化している。
活動期には寛解導入治療を行い,臨床的寛解が得られれば寛解維持治療へと移行するストラテジーで治療を行うが,近年では治療目標が,下痢,血便,腹痛がなく,普段と変わりなく日常生活が送れる状態=臨床的寛解から,内視鏡的あるいは組織学的に炎症を認めない状態=粘膜治癒,となっている。
これまでの研究では粘膜治癒の達成により, 腸管切除術や免疫統御療法の必要性,入院のリスクが低くなることが示されている(文献1)。また,潰瘍性大腸炎は腸炎癌(colitic cancer)発生の高危険群であるが,組織学的炎症の程度と腫瘍の発生率に関して正の相関を認めたとの報告(文献2)があることから,粘膜治癒によって腫瘍発生を抑制できる可能性が示唆されている。
1) Ardizzone S, et al:Clin Gastroenterol Hepatol. 2011;9(6):483-9.
2) Gupta RB, et al:Gastroenterology. 2007;133(4):1099-105.