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大腸癌肝転移に対する新たな手術:ALPPSの課題

No.4772 (2015年10月10日発行) P.48

今井 寿 (岐阜大学腫瘍外科)

吉田和弘 (岐阜大学腫瘍外科教授)

登録日: 2015-10-10

最終更新日: 2016-10-26

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大腸癌肝転移治療においては肝切除が第一選択であるが,両葉に多発する切除不能症例が多く,化学療法を組み合わせた治療成績の向上が試みられている。2012年にassociating liver partition and portal vein ligation for staged hepatectomy(ALPPS)という,新しいコンセプトの二期的肝切除術が報告された(文献1)。従来の二期的肝切除術や門脈塞栓術では,1回目と2回目の切除の間に2~8週間の肝再生期間が必要で,この間の腫瘍増大や肝再生不良により,2回目の肝切除まで完遂できない症例が20%程度存在することが問題であった。
そこで,ALPPSでは1回目の手術で,最終的に残す肝葉の腫瘍切除を行うと同時に,2回目に切除予定の肝葉の門脈結紮と肝実質切離を行っておく。この手術により残肝の早期再生が誘導され,1~2週間で残肝容積は80~90%増大し,95%以上の患者で2回目の手術まで完遂可能であった。
長期成績はまだ不明であるが,2年無再発生存率は41%と,良好な成績が報告されている(文献2)。ALPPSの問題点は侵襲の大きさで,28~44%の患者で重症合併症が発生し,術後90日の時点での死亡率は約10%である。
今後の課題は,ALPPSの安全性が担保される適応基準を設定すること,ほかの治療とのランダム化比較試験で有効性を明らかにすることである。

【文献】


1) Schadde E, et al:Ann Surg. 2014;260(5):829-36.
2) Schadde E, et al:Ann Surg Oncol. 2015;22(9):3109-20.

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