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大気への麻酔ガス排出を減らす低流量麻酔 【麻酔回路内のキャリアガス流量を患者の酸素消費量近くまで減らす低流量麻酔は環境への負荷が少ない】

No.4792 (2016年02月27日発行) P.53

木山秀哉 (東京慈恵会医科大学麻酔科教授)

登録日: 2016-02-27

最終更新日: 2016-10-26

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現在,広く用いられている揮発性吸入麻酔薬はセボフルラン(Sevo)とデスフルラン(Des)である。患者呼気中の麻酔薬は余剰ガス排出装置を介して最終的に大気に放出される。
以前の揮発性麻酔薬は,構造中に含まれる塩素原子由来の一酸化塩素がオゾン層破壊作用を有していた。Sevo,Desはハロゲンとしてフッ素のみを含むエーテルであるためオゾン層には影響しないが,温室効果気体である。国際的に排出量削減が議論されているCO2と比べて総排出量は少ないが,分子当たりの地球温暖化係数はCO2の数千倍に相当する(文献1)。環境への負荷を抑えるには,麻酔回路内のキャリアガス流量を患者の酸素消費量(約5mL/kg/分)近くまで減らす低流量麻酔が最も効果的である(文献2)。
旧世代の麻酔器では,安定した低流量を得ることが難しく,低酸素血症のリスクも懸念されたため,低流量麻酔は一部の麻酔科医が行う特殊な方法と考えられてきた。しかし,最近の麻酔器は安全・確実な低流量麻酔を可能とする様々な機能を備えている。呼気中の酸素および麻酔薬濃度の自動制御,あるいは20分先までの酸素および麻酔薬濃度の予測機能など,薬物動態の理解を深める教育的価値も高い麻酔器である。社会の各方面で環境への影響を無視できない今日,低流量麻酔は必須の麻酔法である。

【文献】


1) Sulbaek Andersen MP, et al:Anesth Analg. 2012;114(5):1081-5.
2) Brattwall M, et al:Can J Anaesth. 2012;59(8):785-97.

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