EBウイルスはごくありふれたウイルスで,多くの成人の体内に潜伏感染している。思春期以降に初感染すると伝染性単核症をきたすが,症状は一過性で軽快する。
他方,EBウイルスが長期間にわたって異常に活性化し,様々な症状を呈する疾患の存在が明らかにされ,慢性活動性EBウイルス感染症と呼ばれる(文献1)。主として小児~若年成人に発症し,わが国も含めた東アジアに多い疾患である。症状として頻度が高いのは発熱,リンパ節腫大,肝脾腫,肝機能異常などで,蚊刺過敏症や種痘様水疱症など皮膚症状を呈することが稀でないのも特徴的である。伝染性単核症で認められる異型リンパ球は認められず,EBウイルスに感染したT細胞やNK細胞がクローナルに増殖していることが知られている。EBウイルス関連抗体検査成績は特徴的で,診断に役立つ。つまり,VCA-IgG抗体価ならびにEA-DR-IgG抗体価が異常に高値を示し,それに比してEBNA抗体価が低い。
本疾患ではしばしば高炎症性サイトカイン血症が認められ,ステロイド,シクロスポリン,VP-16などの薬物治療が試みられるが,その成績は満足すべきものでなく,約半数の患者が3~4年以内に死亡している。現時点で唯一期待できる治療法は同種造血幹細胞移植のみである。
なぜ,長期間にわたってEBウイルスが活動性に感染するのかはいまだ謎である。原因不明の発熱を呈する若年患者では,本疾患の可能性も念頭に置き,EBウイルス関連の諸検査を実施することが望ましい。
1) 木村 宏:ウイルス. 2011;61(2):163-73.