日本老年医学会では,2005年に『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン』を初めて作成し,15年には改訂版を出版した(文献1)。その中で,高齢患者に対して,特に慎重な投与を行うべき薬剤リストと,開始を考慮すべき薬剤リストが示されており,有害事象の懸念からほぼ禁忌薬と言えるものもある。
高齢患者が多いのは言うまでもないが,高齢者の精神疾患,神経疾患,呼吸器疾患,循環器疾患など多岐にわたる。かかりつけ医にはこうしたガイドラインを参考に日常診療を行うことが求められている。また,併用禁止薬や多剤投与も課題になっている。多剤併用により転倒のリスクが増大するというデータも存在する。
診療報酬上,地域包括診療料を加算するには薬剤が7剤以下との条件が示されている。いかに高齢者のポリファーマシーを減らすかということが重要である。これも今後の高齢者薬物療法に対する国の指針とも言える。薬物療法において,まずは薬物動態に鑑みて,有害事象を出さないことと,投与量の調節が重要となる。さらに,服薬管理や服薬支援も重要となる。すなわち,薬物効果を最大限に引き出せるような環境を整えることが重要である。
本来,治療薬は個別性が高いということを意識すべきであり,腎機能低下や,体重,アレルギーなど個人の生理機能をベースにオーダーメードで治療方針をたてることが重要である。
1) 日本老年医学会, 他, 編:高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015. メジカルビュー社, 2015.